2019-01-01から1年間の記事一覧

芽が生える前の一夜(脱ぐべき皮膚も爛れてしまって、

所持することによって傷物になっていくことに抵抗はないのに、得るまえは無傷な状態であってほしいと願うのはなぜか。本を買うときの話である。よれたカバー、やぶれた帯、すれた小口……。古本への抵抗もないというのに。贅沢な話だ。指をずっぱり切ってしま…

ハイチの起床

0/100で考えるものごとのおもさを、1-99のグラデーションによってはかりなおすだけで、多少は心も晴れることがある。なぜひとは極端なものに安心をおぼえるのか? 宙吊りに自らを留めうる忍耐をもたないからである。あいだにとどまりつづけることの苛烈さに…

自らを殺さない方に行く

自己の感性への信頼が裏切られるような出来事のつみかさねがわたしを〈世界不信〉へとみちびき、生は無の連続でしかないということを容赦なく告発する。幾度も経験したドス黒いあざやかなひかりが、まあたらしい皮膚をまとった無軌道のけものが、何重にも周…

跨いだゆびの隠しかた

鳥公園『終わりにする、一人と一人が丘』、皮膚についての芝居、剥きだされた部分の緊張、わたしとわたし以外をわけへだてるいちまい、作中で寓意として語られる語の慎重さを一笑にふしてしまうことが観劇のシステムにおいて再演されることの憂鬱、破れやほ…

ひとりのこらずひきょうものたちを殺す

数年ぶりに文フリに行って思ったのは装丁・造本・組版がよくないと購買のちからがでないということだ。とくに組版がだめだと、よさげな執筆陣でも買うのをためらってしまう。上記の三条件がよければテキストがさほどでも買いたくなってしまう。これは書店で…

波風を座らせる手

自宅でひとりで酒を飲んではいけない。帰宅してすぐに缶ビールのプルタブをぷしゅっとしてはいけない。さもなくば、そのままワインや日本酒にまで手をだして、ニトリでガラス保存容器を買ったのをいいことに冷蔵庫に常備しはじめたつくおき惣菜(先日は鶏と…

太刀打ちする前(できないばかりでないことのしたため

退路を断つ癖がある。そうしないとうごけないからだ。立ちゆかない隘路において、さらに自らを窮地に追いやって、「せざるを得ない」状況をつくっていく。背水の陣、窮鼠猫を噛む、追いつめられれば追いつめられるほど、すりへればすりへるほど、わたしは思…

選べるショベル

インディゴ地平線について先日も言及していたのに気づかぬうちにまた触れていて、いかほど好きなのかと自問するが40にしぼった精選ソングのなかにインディゴからの選出はなく、いちばん好きなアルバムは三日月ロック、ついでスピッツ、今回新たに聴いたアル…

両足の親指のねもと

内出血がひどい。原因が分からないのがこわい。それとは関係ない(と思いたい)が、小指の爪も丸々ぺりとはがれた。のが150にちほどまえのことで、げんざいは小指の爪はもとどおりになり、両親指の爪のねもとに打たれていたドス黒い楕円はつまさきの方へとじ…

くそばかに対するたたかい

これに尽きる。くそばかと名指してしまう回路自体も問題かもしれないが、世のなかにはくそばかがそうではないという顔、むしろかしこさをあたかもにじみだしていますよというような素振りをして悠々とのさばっているのである。参院選直前であるいま、無数の…

遠ざかる崖の位に

複数の問題系を生きるということは、戦線の点在を意味する。抱える問題が増えれば増えるほど、複雑になればなるほど、ひとの〈戦力〉は消耗し、ついには手を放す。ひとを支配するためには、複数の問題を与えてやればよい。異なる場所に火をつければよい。た…

身もちの引導

なかば強迫観念のように何かを観にいかなくてはいけないとここ数年、毎週末ギャラリーや映画館や劇場などに足繁く通っていたが、ここにきていまだかつてないおちつきを得ているのはなぜだろうか。家のなかには天井まである3つの本棚をところせましと埋める積…

パララックスの健忘、あるいは臨戦

先月と、先々月の心情の、たたかいの記録として記す。理不尽だなあと思いながら日々zangyoしているが、かかわっているひとみんながみんなそう思いながらやっているような気がしてかなしいしばからしくなる。編集の段階で地獄を見ていると、デザインあるいは…

20代後半にもなって電気が止まるような生活してるとは夢にも思わなかったよ

永続的にも思える資金難、われわれの20代を覆い尽くさんとするこの停滞のムードに対して抗うことは一筋縄ではいかない。たとえば休日、このわずかばかりに得た時間を何かを鑑賞することに費やさんとするとき、「でも今月余裕ないしな……」という逡巡におそわ…

浜辺のふたり

新潟の片田舎の無人駅で、一日に何本も走っていない電車を待合室で待っていたとき、わたしは統合失調症なんですと話すおじさんと言葉を交わす機会があった。もう5年もまえのことである。自らの状態に対して、そうやって名前をあたえることができるというのは…

耐えたあとに何が残るのと尋ねるまえに彼は逝った

学生の頃から愛用していたz623のウーファーが死んでしまったくさく、とてもかなしい。分解して直そうと試みたがパーツが外れずどうにもならない。重低音がやばいことのみが優れた点だったというのに……。枕を買い替えた。包丁も買い替えた。どちらもスピーカ…

厳密さをくいしばる

ふとはずみのようにでてきた浅はかなーー浅はかである、と発話者が一糸も思い至ることのないようなーー発言に対して、その一言一句を厳密に思考し、適切な「返事」をあみだそうとする際の「コスト」は、何らかの「便益」を生みうるのだろうか。コストだの便…

生のデッサン#1

……んが、小早川氏のあしもとを気のたった蛇がうねるように横切っていったので、ひ、と息をのんだのでしたが、そのおどろきはほかのだれの耳にも入ることなく、わたしの呼吸器と感覚器のなかだけで完結してしまったのでした。でも、そのときはじめて、ムン坊…

あたまのtrans、からだのtrans、

隣人が引っ越すようである。大した近所づきあいもしていないのだが、わたしがこの部屋にやってきたのとほぼ同時に入居してきたひとたちなので、少しだけ感慨深くなっている。たち、といったが彼女らは4人で暮らしている。それぞれヴェトナム語を話し、昼は色…

いつでもひとを殺せる安心

いつでもひとを殺せる安心

二重化された人体の分断

自由を志向する姿勢を顕彰するしごとをしながらそれにたずさわるわたしの自由ががちがちに縛られているのはなぜなのか。複数の考えが入り交じる「集団制作」において、「下働き」の立場にある者が加担したくないことがらに対していくら拒絶のふるまいをした…

過剰防衛の馬乗り

わたしの背が見しらぬあなたに触れるまえに、腕やひじ、かばんを以て押しもどされる、というよりもただ押される、走行にともなうゆれによってすこしかたむいただけのわたしのからだは、後ろから見えないちからによって強引に圧をかけられ、その圧がまえに立…

このまま激怒しつづける

大小さまざまのいらだつことが寄せては返す波のようにふりかかってきているのだけれどそれをそれぞれ本人あるいは現象に返さずこんなところで吐瀉しようとしているおのれにも腹が立ってくるね。 まいあさまいよるおれはきれています。なぜわたしのいえはこん…

永遠に向こうにいく

今週末も日曜まででることになりそうで、ひさびさもひさびさの半月休みなし、土日がつぶれようが平日はおそらく通常運行なので来週金曜まで20日間はたらきづめになりそうである。21日目は観劇の予定がすでに入っているのでなりふりかまわず包丁をふりまわす…

しかるべき強制への対峙

いまの日本でニュースを見たり読んだりしていると、ろくでもない出来事ばかりが視界に入ってきて世界に対する悪意ばかりが募り、思考は砥がれるがその過程で生まれる言葉は負の文句ばかりだ。それらはよく練られていない、不完全な書きつけではあるが、次な…

断てぬ愛

はてなダイアリーを開設していちばん最初に書いた記事のタイトルは『じいちゃんが脱糞した』だった。2010年の12月に書いたのでもう8年半ほどになる。そんな祖父が今朝死んだ。先々週にお見舞いに帰ったばかりだった。父方の本家が実家と距離的にちかいことも…

海にゆけば物語は解決する

美術館やギャラリーで映像作品を鑑賞する際、ひとつの画面と複数のヘッドフォンが用意されている場合がある。その光景を観察していると、基本的に映像作品というのは鑑賞者に見向きされにくく、目を向けたとしても耳を向けるひとは少ないので音のない画面を…

ベリーシャイ、(ノーマーク

Apple Musicの導入と、イヤホンを得たことによる生活の向上がやばい。音の防護壁による通勤電車での苦痛の減少、テンションぶち上げミュージックによる精神のドーピング、シャッフル再生なんて5、6年ぶりにやったよ、iPod nanoをどっかにほろってからずっとC…

手にとる必要

今朝は本場のfuckとassholeを耳にしてテンションぶちあげです(しかも矛先はおれ!)。 排気口『群れたち』という演劇公演のフライヤーをデザインしました。 コピーも担当しています。 今週末の2019.4.20-21(土日)に高田馬場プロト・シアターで上演されま…

生あるいは正のくじき

うっすらとしたつながりが背景の色にまぎれて、もしくは深く沈殿して消えかかっていたとしても、ふとしたときにおもてに浮きあがってきて、はっきりと切れ目のないかたちを示すことがあるが、それを希望などと名づけて呼びあらわしてしまうのはたいへんに苦…