2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

浜辺のふたり

新潟の片田舎の無人駅で、一日に何本も走っていない電車を待合室で待っていたとき、わたしは統合失調症なんですと話すおじさんと言葉を交わす機会があった。もう5年もまえのことである。自らの状態に対して、そうやって名前をあたえることができるというのは…

耐えたあとに何が残るのと尋ねるまえに彼は逝った

学生の頃から愛用していたz623のウーファーが死んでしまったくさく、とてもかなしい。分解して直そうと試みたがパーツが外れずどうにもならない。重低音がやばいことのみが優れた点だったというのに……。枕を買い替えた。包丁も買い替えた。どちらもスピーカ…

厳密さをくいしばる

ふとはずみのようにでてきた浅はかなーー浅はかである、と発話者が一糸も思い至ることのないようなーー発言に対して、その一言一句を厳密に思考し、適切な「返事」をあみだそうとする際の「コスト」は、何らかの「便益」を生みうるのだろうか。コストだの便…

生のデッサン#1

……んが、小早川氏のあしもとを気のたった蛇がうねるように横切っていったので、ひ、と息をのんだのでしたが、そのおどろきはほかのだれの耳にも入ることなく、わたしの呼吸器と感覚器のなかだけで完結してしまったのでした。でも、そのときはじめて、ムン坊…