サドンデス中量級

階下も隣室もひとが越してきてしばらくになるが、読書をしようと決めていちにちじゅう家にこもっていたある日、日の浅い方に住む男が引越しのあいさつをしにインターホンを鳴らし、菓子折りを差しだしてきた。東京にきてからこんなことははじめてだ、と書きながら思い起こされるのは最初に住んだアパートのことで、わたしがその家をでることを決めたのちにそういえば引っ越してきたばかりの隣人から菓子折りをもらったなということだった。こうやって書くまではあたまにもよぎらなかった過去の記憶がこうして浮かびあがってくるふしぎさを、『精霊たちの家』のエピローグを読みながら感じている。ずいぶんとちまちま読んでいたが、チリに生まれた女たちが3代にわたって語りつづける愛と暴力と幻想にみちた長い歴史のうねりのなかに身を任せるのは、くたびれた退勤時の安らぎとしてわたしのこころを地球の裏側へと吹き飛ばしてくれた。長い時間をともにしただけあって、終盤には名残惜しさもあったが、読みおえたときには登場人物たちとともに生きた感慨が自身のうちに湧き上がるのを感取した。上下巻にわかれるほどの長編を読んだのもひさしぶりな気がする。パトリシオ・グスマンの『チリの闘い』を観てからというものチリにはずっと惹かれつづけており、いつか必ず行ってみたいと思っている。


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キャンセルまつりの瀬戸際で来日したジェイ・ソム、、


実家をでるときにもってきたシナモンロールの茶碗にひびわれを見つけてから数ヶ月経つが、日に日にその亀裂がはっきりとしたかたちをなし始めているような気がする。わたしの食器棚には自らの意思で買った食器よりもなしくずし的に使っている類のものが多く、そのあたりから生活を変えなくてはと考えている。わたしの好きなものだけにかこまれた生活(そんなことは不能である)。先日買ったそば猪口でビールを小分けにして飲むのがたのしくてしょうがない。つくおきも案外つづいていて、やればできるじゃないかと自分を褒めておく。

はじめて飲んだアブサント、ペルノでいいやんけという味。薬草酒にしばらく前からハマっています。タイヤの味がするというサルミアッキもペルノラブ派のおれはおいしくいただけるのではと思っています。アニス、アニス! リコリスリコリス

買おうと思っていた土鍋はkintoのもので、keyucaのスタイル土鍋と迷っていたのだが迷えば迷うほど買うべきなのは土鍋でなくてホーロー鍋なのではというきもちがせりあがってきている。保温性さいきょうはわかったけれども、土鍋って使い勝手あまりよくないのでは、もうすぐ冬もおわってしまうのだし。バーミキュラにいくまえのつなぎとして何がいいでしょうか。また調査の日々がはじまります。炊飯器も洗濯機も10年ものレベルなのでどうにかしたいですが現アパートは洗濯機置き場が外にあるタイプの賃貸なので後者はどうせなら引越しのタイミングで買い替えたい。財力がもうすこしだけあれば、、

わたしが今年注力すべきなのは書くことと読むことだと自覚しはじめています。週にいちどは読み書きのためのいちにちをつくって、習慣づけをしなくてはと思っています。肌の上にも内側にもべったりとはりついた甘さをいよいよ断ち切らねばなりません。