カマキリ・ナイフ・クライシス

もじ イメージ graphic展@21_21 design sight。ワンジーホンの本が資料としておいてあったのがよかった。ほしい!と思った頃にはもう手に入らなくなっていた、彼がデザインを手がけた本のカタログ本である。すぐれたしごとがいくつも収録されているすばらしい本であるのとにちがいはないが、閲覧コーナーで巻末のコメント以外は通読して、むりして古本を手に入れなくてもいいなと思ったのだった。これ以後の作品がまとめられる際には買いたい。

大原大次郎「HAND BOOK」@ggg。展示構成はわたしがおもしろい!と思うところにフィーチャーしているのではない。しかしおもしろいと思うところがいくつもあって、2121で展示のもととなった(?)本をパラパラしたときの「べつにむりして行かなくていいかな?」のきもちは鑑賞しているあいだに解消されることになった。手わざ。

蔦屋で本をパラパラしたのち、集合時間が1時間遅れることになったので渋谷まででてhmvbooksへ。多和田葉子『穴開きエフと初恋祭り』を買う。装丁、単行本のほうが断然よかったなと思う。この考えは読みおえたら変わるかもしれない。装丁は購買時だけではなく、所有の段階でもそのちからを発揮するのである。

西荻にてHさん、Tさん、Hと卓を囲む。のち、MさんやSさんもやってきて、グッドナイトをする。

Hさんの出発を見守り、Qさんとダラダラしたのち、西荻の名店・キャロットへ。赤身ステーキ(牛とうがらし)とトマトチキンソテー。うまい! ボリュームもすごい! 山盛りのライスを食べすすめながら、「とうがらしってついてるけど辛いの?」「いや、辛くないですよ」とQさんと会話したが、とうがらしは部位であるということをのちのち調べてしるのであった。つぎはハンバーグを食べたい。サーモンフライも付けたい。

marks&webで石鹸を買ったり紀伊國屋書店で植物図鑑(野草・野花についてしりたいのですがなにかいいのありませんか)を探したりしたのち、ゴールデン街は十月へ。行く日が直前まで決まらなかったのでとくに連絡はしていなかったのだが、IさんやWさんらとも会え、ハッピー。のち、プリキュアバーと名高きgimmickへ初潜入。入店すると店内は満員で、あ、今日は無理かなと思ったが、「プリキュアですか?」という店主から呼びかけに「そうです!」と応えると、先客のプリキュアたち(?)と相席で座することができたのだった。むろん、全プリキュアライブ全通の、わたしなんかよりも筋金入りのプリキュアたちである。プリキュアについての話をこのように話す機会なんてないので、めちゃくちゃ充実の時間だった。とはいえ、同じプリキュア好きと言えどもどこに着目するかはやはり異なるもので、あの演出がどうこう、というような話もいつかしてみたいのだった。同卓にはふたりおり、そのうちのひとりは「俳優になるためにちかぢか東京に出てこようと思っているんです」と語る遠方からライヴを観にきた夢を追う若人でひじょうにまぶしかった。

朝、長時間労働に出発するHさんを見送りつつ、わずかなねむりをはさんでだらだらと支度をし、これまた長時間労働帰りでベッドに沈みこんでいるQさんに別れを告げて帰路へ。「帰る前においしいもの食べれるといいね」と出勤の際に祈りをこめてくれたHさんの顔を思いだしながら、コンビニでツナマヨおにぎりとカレーパンを買って、食べながら駅まで向かう。途中で鼻もかむ。

まっすぐに新幹線に乗り換えて、ひらくのは福間健二『あと少しだけ』。新白河に至らんとするあたりで頁から窓に目をやると白い。帰ってきたという感じがする。風も吹いている。本のカバーの背のあたりには今回の滞在で傷ができた。摩滅して撚れた紙の繊維が、竜巻のようにして反り上がっている。「おたがいがんばりましょう」。昨晩聞いた目をきらきらさせた若者の声が、2024年の1月の昼下がり、わたしの耳に木霊する。東北の風はつめたい。



寒さの質が段違いだと上着のファスナーを閉じながら在来線に乗り換え、自宅を目指す。途中で『あと少しだけ』を読みおえる。付箋を『ルート29、解放』にはさんだままトランクにしまってしまっていたので貼ることができなかった。詩手帖での連載に書き下ろしを1編あたまに足した構成。「〜だ」と断定するのではなく、「〜のか」と宙に放り投げる詩行の歩み、あるいは、否定型によって前へすすもうとする足取り。福間健二のそういうところにわたしは惹かれる。つぎに向こうで買った多和田葉子『穴あきエフの初恋祭り』読みはじめる。「胡蝶、カリフォルニアに舞う」、夢オチの可能性を感じた幕切れだった。

デスワーク。気合でやる。

夜、肉どうふ。うまい。

飲み会。Kさん、Kさん、Tくんと。飲んでる場合か!というタイミングではあるが、前々から日程調整をし、わざわざわたしのために(ほんとうか? おまえだけの思いこみではないか?)企画してくれたものなので万難排して馳せ参ず。このように、この場所で、かつての同級生ではないだれかと卓を囲むのはひょっとするとはじめてなのでは?とこれを書いているいま思い当たっている。いや、KとIくんが遊びに来てくれたことがあったなとすぐに思いなおす。3人ともしりあってまだ日が浅いので、そこまでつっこんだ話はしなかったが、こういう場が今後もつづいてくれれば、日頃の生活にももう少し張り合いがでるのでは?と思った。