会いに来る場面の空振り

山本直樹『定本 レッド』最終4巻。敗北の文学、という語が、作中で殺されてしまうあるにんげんにとっての好もしいものとして作中にあらわれるが、本作もまた、その系譜を辿っている。かぎりない殴打とナイフによる突刺ののち、アイスピックで執拗に人体を刺しまくって「処刑」をおこなう苛烈さに胃もたれしそうな序盤、総括・逮捕・脱走と次々と仲間たちが消えていき、捜査の網も狭まって徐々に追い詰められていく中盤、そして最後の抵抗の舞台となる「あさま山荘」での籠城戦と、その書自体のぶあつさがあらわす通りのヘビーなボディブローを内臓に喰らった。無数の若者たちが無惨にも死んでいく話だが、単に悲惨なだけではなく、死を前にしたにんげんの漂わせる抒情がそこにはある。そのように描いている。べつに英雄とかそういう風にではなく、かといって悪魔のような人物として描くのでもなく、ひとりのにんげんとして、描いている。兄・一郎によってオルグされ、なおかつの彼へのリンチに加担させられながらも、なんだかんださいごまで生き残った年少者である二郎と三郎にひかるかなしみをおぼえた。革命のための運動の実態が、こんなものだとさいしょからしっていたとしたら、はたして彼らは活動に参加しただろうか? また、途中離脱した赤ちゃんはじっさい、ぶじに育っているということだが、このすさまじいバックグラウンドをどう受け止め、どのような大人になったのだろうか。

などと言いつつ、漫画としてのおもしろさよりも、歴史としてのおもしろさのほうをつよく感じた(わたしがドキュメンタリー映画を観る際に考える、ふたつの車輪みたいなものだ)。この印象は、単にわたしが「山岳ベース事件」や「あさま山荘事件」についてくわしくなかったという背景が影響しているのかもしれないが。漫画らしい(?)烏の演出は好きである。


▼ふたつの車輪について
seimeikatsudou.hatenablog.com


心底カスみたいな連絡(連絡してきてくれたひとは何にもわるくない、内容がカス中のカス)があり、レッドを読んだ影響もあってか「総括だろ総括!」というきもちになる。レッドを読んでいる最中にも思っていたことだが、いったいここでは何がまかりとおっているんだ。こんなことが野放しになっていていいのか。

夜、牛丼。牛、玉ねぎ、厚揚げを酒・みりん・だし醤油・生姜・七味で。うまい。



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▼おたよりは以下より
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インボイス反対署名受取拒否の報。いったいここでは何がまかりとおっているんだ。こんなことが野放しになっていていいのか。「暴力が支配するところ、暴力だけが助けとなる」。こういうときに「選挙」をもちだすにんげんと、それに呼応するにんげんによって「制度」が維持・再強化されるのも耐え難い。下手したら「受取拒否」その出来事自体よりも。アルゼンチンの失業労働者運動(MTD)グループのメンバーは以下のように語る。

MTDのメンバーが投票に行かなくなってからもう随分経ちます。私たちの運動は、選挙が私たちの問題を解決することはもはやないと考えているのです。
廣瀬純+コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』)

彼らは体制維持の方途である「代議制」に乗っかる代わりに、路上へとくりだす。抵抗の手段として、国内の流通を破壊するために道路を封鎖する。そうして政府にカネをださせる。90年代末から00年代はじめにかけて、アルゼンチンにおける中心的な政治行動となった、「ピケテロ運動」である。たとえばわたしの選挙権取得時を基準点にしたって、「リベラル」はまいかい「敗北」しつづけているのに、つねに「代議制民主主義」に希望を見いだそうとするのはなぜなのだろうか。「火炎瓶」だの「ゼネスト」だのいう単語がいくつか確認できたのは幸いだが、それは「おすすめ」タイムラインにでてきたものだからなんの「幸い」でもない。「署名」だって選挙外の活動なのだから、そんな敗北の反復にこだわっていないで、もっとほかの方法を思案・実践していけばいいのだ。おれも読みさしてある『ポスト代表制の政治学』をふたたび手に取ろうと思った。いや、そんなことをしていないでわたしも路上にでればよいのだが、こんな田舎で路上にでても寄ってくるのは蚊だの蛾だのだけである。

めずらしく生身でミーティング。同級生であるHに誘われ、まだ今年できたばかりだという古民家を改装したオルタナティブスペースへ。かなりいい感じの場であり、いろんなことができそうだと思った。初対面のTさんもグッドなバイブスを感じる。こんなかたちで高校時代の同期とめぐりあうのも乙である。チャリにもひさびさに乗ったが、いいもんである。いつまでもおさまらない猛暑と祖母の介護の関係上、このところずっとタイミングを逸しつづけているのだが、雪が降る前のさいごのひと月は乗りたおしたいときもちの上ではつよく思っている。

夜、ひき肉・玉ねぎ・ピーマン・カボチャのガーリックヨーグルト炒め。パプリカパウダー、コリアンダーも振る。うまい。