いまおれは100倍になり、きみは1000倍になる

「杉浦非水の大切なもの 初公開・知られざる戦争疎開資料」展@川越市立美術館。よかった。展示の目玉となっているのは「非水百花譜」という草花のスケッチの原画なのだが、それにはとくべつ心惹かれず、いわゆる「図案」に見惚れる時間を過ごした。松濤美術館でやっていた津田青楓展のことも思いだした。ひとでも少なく、『みつこしタイムス』の装丁や題字などを堪能した。ながめているうちに筆文字、やってみようかな?のきもちに。今後、わたしのワークあるいは制作物にそんな傾向が見られたらそれはまちがいなくここからの影響です。退館前に、同時に開催されていたいきいきシルバークラブみたいな地元の老人たちの絵や写真や立体物の展示もぐるりとし、こういう展示も好きなんだよな、と思った。


▼津田青楓展の感想
seimeikatsudou.hatenablog.com


在廊前に、新宿にてえっちゃんラーメン。うまい。あぶらっこくて、しょっぱい。なみなみと注がれたスープに、大量の薄切りチャーシュー。無添加だの無化調が幅を利かせている今日このごろだが、おれは化調のたっぷり入ったラーメンが大好きだ!と店員がハイミーかなにかを鍋に投入しているすがたを見て思った。また行きたい。

Rとゴールデン街で合流し、在廊。個展最終日ということで、Iさん、Dさん、A、Mさんと続々とやってき、さらにはH、Iさん、Kさん、Y、次いでMさん、K、さらにはSさん、Kさん、閉店間際にはH、T、Oさん、Sさん、Kさんまでもが集まってきて、店からひとがあふれだすほどのてんやわんやな空間に。初対面同士の組み合わせも無数にあったろうが、眼前にはいい感じに話がまわっている画ばかりがあり、うれしいきもちになった。ひとが多すぎてほとんど話せなかったひともいるのだが、この一年でいちばんよろこばしい風景がそこにはあった。作品を観る環境としては最適ではなかったかもしれないが、「場」をつくりたいとつねづね考えているわたしにとっては理想の空間だった気がする。最後までのこってくれたA、Kさん、Y、Kが撤収作業を手伝ってくれ、しかもKさんが会計を済ませてくれており、大荷物を抱えながらも大感謝のきもちでHQハウスヘ帰宅した。

HQハウスには先客があり、Hさん、Qさん、Kさんがアジカンイントロクイズをするさまをながめていた。Qさんが再生ボタンをタップすると、もはやにんげんではないスピードでHさんの口から回答が発されるのだった。

起床。この日こそHさんといっしょに家をでたんだな、たぶん。ということで藤沢へ。海を観に行きたい!というわたしの要望に乗ってくれたAとRと、いまや数年に一回のペースになってしまったが、大学時代からずっとつづく「ぷらわん」という会合。+1、つまりは一浪した同窓のあつまりである。だいぶ早くに着いてしまったのでヨドバシとジュンク堂を冷やかし、プリキュアのガシャを回したりカードウエハースを買ったりしてから、待ち合わせ場所のフジサワ名店ビルのコーヒーショップ海にてハヤシライスランチセット。Aはここによく通っているのだという。至るところに掲げてある地名に『サーフ ブンガク カマクラ』の匂いを嗅ぎとりつつ、スラムダンクの聖地らしい踏切を傍目に、集結後はAのカーで神奈川近代美術館 葉山館へ。海辺に建つ品のよい美術館。そのロケーションだけで100点である。お目当ては「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展と「加納光於 色、光、そのはためくものの」展。コレクション展である後者のほうにより心を惹かれた。大学時代に版画をやっておけばよかったなという後悔。いまからでもWSとか行ってみたい。

企画展はふつう、期待ぶんを考えればちょっとマイナスという感じ。その印象の理由としては、ここで為されているエディトリアルがよくわからないというのがいちばんおおきい気がする。どのようにイメージを継いでいるのかが、あまり自分の感覚とマッチしないので、鑑賞していると「?」があたまに浮かぶのである。個々の写真にグッとくるポイントはあっても、それらがまとまって提示されたときのつまらなさが、さいしょに感じたよさの足をひっぱるのだった。

観おえたあとはミュージアムショップを冷やかしつつ、海辺に降りてチル。海! サイコーだ! 足を海に浸すのははたしていつぶりか?! 江ノ島に行ったときもちょくせつ海にタッチしたおぼえはないので、と書いて上に引用した記事を読みかえしたら磯に指をつっこんでしっかり蟹にさわっていた。足を波に洗われること自体がひさしぶりということだった。いきおいのある波の到来に逃げそびれ、履いていたパンツもぐっしょりとのまれた。燦々と降り注ぐ太陽が帰る頃までにきちんと乾かしてくれた。

特筆すべきチルポイントは「小磯の鼻」の名づけられた芝生の生えた丘。裸足になって草の上にころがり、陽射しと海風を浴びる。今年の「夏」を、1年ぶんここで経験した。どうやら夕陽の名所でもあるらしく、あたりにはカメラを構えた老若男女が静かに日が暮れるのを待っていた。途中、スマホからダサい音楽を大音量で流しながら歩いていったカップル以外は、何もじゃまなものはなかった。