呪いあい夢中

幾原邦彦少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』(1999)。すごいものを観てしまったなという感慨。はたしてスポーツカーにトランスフォームするウテナに衝撃を受けなかったにんげんはいるのだろうか? そんな彼女に跨って、「世界を革命する力を!」と絶叫しながら「世界の果て」を突破しようと疾駆するアンシーのエモーショナルさは、テレビ版にも増して苛烈なものだった。主体性を得た、つまりはテレビ版最終回以後のアンシーがここにはいるのである。そこでテレビのOP曲が流れる演出もあまりにもよすぎる。また、この「外へ!」という欲望装置・物語装置のつよさは『地球外少年少女』でも描かれていたもので、その構造の強力さを思いしったのも個人的な発見だった。

車へのトランスフォームだけではなくデュエリスト形態へのメタモルフォーゼも進化していて、プリキュアでもおなじみだが、やはり「髪がのびる」ギミックはサイコーだと思った(本作のウテナはショートへアになっているがゆえに、変身シーンがより際立つものとなっている)。ディティールで言えば、学園の背景に顕著だが「赤」を影の色としてつかうカラーリングもひじょうにきょうれつだった。画としての強度を保持するものであるとともに、これは学園-世界のフィクション性を強調するものでもあるだろう。前半は近親相姦的エロスが匂い立つシーンも多く、なかでもシーツをつかったセックスメタファーがヤバすぎて思わずわらってしまった。前触れなしでありながら、まったくもって自然に入りこむことのできるvs.樹璃シーンの導入も凄まじく、全編86分というコンパクトさはこうした思い切りのある編集に精髄があるのだと感銘を受けた。

ほか、アバンにCGが使用されているところにおどろいたり、牛七実と眼鏡三人衆のギャグパートにわらったりした。鐘のシーンから幕開けるということは、決闘の勝敗がそこで決しているということであり、それはテレビ版との結節点を成すものとしてあるのだろうか?と思った。序盤のミッキーと樹璃のフェンシングシーンなど、モブの雰囲気に平井久司みを感じる場面があったのだが、作品には参加していなかった。当時どのような宣伝戦略のもとに決定され、それを視聴者がどう受け止めたのかはしらないが、暁生の声が及川光博になっており、ED曲も担当しているのはちょっと受け入れ難かった。


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松本理恵京騒戯画』(2013)2-5話。人物はママで、背景のみを変化させる演出の多用は並行世界とのアナロジーでやっているのか? ウテナとの関係でいうと、三人議会と生徒会の構造は似ている、と思った。モブがハリボテスタイルなのも似たムードを感じる。いらなくなったものを空に浮かべて捨てる「駅開き」は、『始まりと終わりのマイルス』だ!とテンションがアガった(4話)。「始まりと終わりを連れて帰ってくる」と言いのこして消えた父・明恵上人というバックグラウンドのもと、夕暮れの黄金色の草原のなか、自らの式神の名前である「阿」「吽」が始まりと終わりという意味をもつことをコトが明恵(のこされた息子)に明らかにするシーン、1話ラスト並に心をうごかされた(5話)。エンドクレジットの絵コンテと演出の欄には志水淳児の名があり、納得の頷きがでた。マジンガーZ/INFINITY観ないとな。

祖母と妹と買いだし。気晴らしになる。

夜、トマトとアボカドと挽肉のスパゲティ。うまい。ひとりぶんをつくるにはパスタは最適だが、多人数のものを用意するとなるとめんどうなのでなかなかつくる機会がない。今日は祖母以外家を出払っているので食べることができた。

松本理恵京騒戯画』(2013)5.5-最終10.5話。5.5話、予告の時点でしってはいたが、とつぜんの実写回にわらう。本作出演の声優たちによる、聖地巡礼番組。ラストの10.5話もメインの2人をナレーターに据えた「復習篇」と題された総集編回で、0話もある本作はヘンテコな構成だと思った。アニメにもどった6話では、静(台詞なしの薬師丸幼少期シーン)と動(コトvs.ビシャマル)の対置が冴えていた。これまで超人として描かれていたコトが、感情を爆発させて明恵に泣き言をぶつける7話も印象的。ここまで観てよくわからなくなってきたなと1話を再見したのだが、初見では「?」だったイントロダクションも、いま観なおしてみるとよくできており、おしりから緻密に組み立てていたことがわかる。

「すべてをぶっ壊す」とコトが啖呵を切る8話を観て、いまさらながら『惑星のさみだれ』のことを想起する。アラタマもビスケットハンマーみたいだし。9話で明恵上人がコト(視聴者)にあれこれを説明するシーン、ロングショットでふたりの歩行をかなりの長回しで撮っており、ふしぎな印象を受けた。右から左へ歩いていくのは遡行のメタファーか? 父からの過剰な期待(先生→コト)と約束(明恵上人→薬師丸)が主人公ふたりを縛りつけ、三人議会では「ゆりかごから出ろ!」と叱咤される展開は上で触れたウテナ-地球外少年少女の「外へ!」の構造と合致するものだと思った。次回予告が線画のgifアニメーションなのもひじょうによかった。

実質的最終回の10話はこれまでとフォントが異なるクレジットはじまりで、なおかつ劇中でED曲、EDでOP曲が流れるというゲキアツ構成。だいぶわけのわからない導入ではじまった本作も、おわってみればかなり綺麗にまとまっていて、むちゃくちゃやっている方が好きなにんげんとしては物足りなさもあった。もっとわけのわからないままぶっ飛ばされてみたかった。

今石洋之天元突破グレンラガン』(2007)1話。爆発からスタート。熱血! 情熱! 暗い地底から未知なる地上へ!というめちゃくちゃわかりやすい導入で、ウテナ京騒戯画と観てきた脳に心地よかった。同人に『キルラキル』を観ようと思っていると話したとき、だったらこっちを、とすすめられたのだった。この記事が更新されている頃には配信終了の赤字がでていたので、それも後押しになった。全27話、はたして完走できるか。