たどりついたことのあるひとら(目を合わせられない)

渡辺信一郎夏目真悟スペース☆ダンディ』(2014)6-8話。6話にでてくる「その月だけが残されていた」という言いかた。地球に対する月的存在(つまりは衛星)を称する際にナレーションとしてあらわれるのだが、いろんなものをすっ飛ばしてわたしたち観客の住んでいる地球が基準になっている感じがいい。こうした描写はほかの回でもあった気がする。「キモ・エイリアン×方言」表象がふたたびあらわれ、脚本家が変わってもこのような演出が為されるということは、そういう意識が作り手側に共有されているのだなと思った。ストーリーとしては尾田栄一郎『ワンピース』(1997-)の「ドリーとブロギー」的な話が語られるが、この型にさらなる元ネタはあるのだろうか。

7話で初出のダンディ・ミャオ・QTへの「バカ・ボンクラ・ポンコツ」呼称は、そのイントネーションも相まって声をだしてわらった。銀河美少年パロや、アイキャッチの多さ、「ロボットアニメ」しているのもよかった。呼称といえば、はぐれ犬に対して「ワンダフルココナッツパイ(略称:ワンコ)」と名づけるのもすぐれたネーミングセンスだと思った(8話)。序盤にあらわれたDr.Hとビーが、おまけのようなかたちで終盤しっかりブラックホールに吸いこまれるのがおかしかった。

夜、ハム卵炒飯、さつまいもと鶏のコンソメスープ、豚と白菜の味噌焼き。

ワーク。悪文まじりの原稿を読み、なおかつそれを適切なかたちに「なおさない」という方針のもとに手を入れる作業をしており、あたまが狂いそうになる。誤字脱字と文章の誤りの境目を辛抱づよく見定め、その微妙な破れ目をか細い針でちくちくと縫うような時間。ひいひいいいながら、なんとかやりおえる。

朝、ひさびさにカップ麺を食し、会社員時代、ほぼ毎昼食べていたことを思いだした。カップ麺+サラダが会社員時代後半の基本フォーマットで、たまにそこにおにぎりやパンの類が追加されたり、サラダが炭水化物に置き換わったりもした。

昼、フェットチーネのツナ節ペペロン。うまい。

渡辺信一郎夏目真悟スペース☆ダンディ』(2014)9-13話。ファーストシーズンはこれでおわり。明確な枠のない塗りやウネウネ線、サイケな色調に湯浅政明感がすごいなと思って観ていた9話は、サイエンスSARUの現代表チェ・ウニョンが原案・脚本・絵コンテ・演出を務めており、観るドラッグとしてたのしくながめていた。アニメーションのきも(ちよ)さが眼目となっているような作劇なのだが、不快でない「作画アニメ」として観ることができ、作画アニメ・アニメーションの快楽を考える上のいい手がかりになりそうな回だった。

10話ではとうとうイデオン本体が登場。前口上のあるアニメでは、アバンがいつもとちがうだけでテンションがアガる。単調な田舎の生活とループものを絡める脚本の手腕がめちゃくちゃよかった。担当はうえのきみこ。同じくうえのが脚本を書いた12話の「釣り」ネタや「4人いる!」もおもしろかった。ファーストシーズン最終話となる13話ではQTを主人公にAIロボットの恋が描かれるが、相手役のコーヒーメーカーさんがちゃんとかわいくてすごかった。夢の島×家電×ダンスには今敏の風味を感じた。


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幾原邦彦少女革命ウテナ』(1997)12-20話。12話、これまで空っぽ描写の目立ったアンシーにもウテナを幻視させることで、その内面の存在が匂い立つことになる。11話で初の敗北を喫したウテナに、たった1回のスパンで逆転させてしまう展開を見るに、戦闘のドラマではなく、心理(関係)のドラマが優先されていることがわかる。これは20話に至るまでの各戦闘シーンのあっさり具合からも看取できることだ。そんななかでも、バンクとして使用され、OPでも印象的にあらわれるウテナの突き描写はなんど見てもカッコいい。

13話は総集編回だが、新キャラと新要素が登場し、意味ありげな演出もあって単なる回顧におわらない新鮮さがあった。14話では、ソファに座るアンシーの兄とその許嫁が何気なく手をつないでいたり、ミッキーを自身のゼミに勧誘する御影が柱で分断されていたりと、画による関係性の演出が冴えていた。エレベータの落下と自身の心中に深く入っていく告白をむすびつける演出もすさまじい。担当は細田守の別名・橋本カツヨ。決闘広場で机がテトリスみたいにうごくのもウケる。ミッキーと言えば、妹とのキスシーンに薔薇演出をするのは心憎いなと思った(16話)。

「何か文句ある?」連発の七実(15話)も、餅を突きだす七実(16話)も、「モーモー」言ってドナドナ牛になっていく七実(16話)もかわいく、あらためてめちゃくちゃ好きなキャラ造形だなと思った。石蕗が闇墜ちする直前のシーン、徹底して七実と同一フレーム内に入れずに断絶をあらわすのもよかった(18話)。ラスト、そんな彼の「大人」を感じた七実が「暑くなるわね……」と季節の変遷にしみじみとひとりごちるのがマジでよかった。脚本は山口亮太の別名・比賀昇。16話もそうだが七実回はたいていこのひとが書いていて、どれも好き。

枝織の言いよどみの間の長さが印象的だった17話では原画に香川久の名前を発見し、興奮する(どこを担当しているかまではわからない眼力、、)。そう、フレッシュプリキュア!キャラクターデザイナーである。脚本は月村了衛。Hさんの大好きな機龍警察だ!とテンションがアガる。20話でも月村が脚本を務めていて、これまたよかった。若葉の部屋のかっぱのポットや西園寺の制服といった緑の差し色や、肉のパックに貼られた「J.C.スタッフ動物園(?)」のラベル、じりじりとした暑さが薫る夕暮れ描写、若葉の作画の気合の入りぶりなど、演出やネタ、作画方面でも見るべきところの多い良回だった。20話のばねとなる19話、若葉との達也の「私にも玉ねぎ王子様がいるんだから!」「えっ」というやりとりの4度にもわたるくりかえしや、運命を匂わす場面で街頭を点灯させたりする演出もよかった。若葉の恋の行く末を明かすオチのひねりもそっちか!というおどろきがあって印象にのこった。脚本と絵コンテは風山十五(五十嵐卓哉)。演出は高橋亨

雪をかく。

夜、大根の味噌汁。里芋と鮭と大根の煮っころがし。うまい。