白い花びらを縫う朝に書かれた願書

朝食、そせじうどん。注文した本がとどく。値段のわりには受けとった段ボールは軽く、その単価の高さを思って少しだけウッとなる。しかしそんな嘆きも手もとにとどいたよろこびのほうが上回り、少しばかり小躍りする。居間で座ってテレビを見ていた祖母は、わたしがいないとごはんもろくに食べられずにいたようで、不憫に思う。本を受け取りに玄関にでた折、祖母の部屋からテトリスのBGMが漏れでていた。妹のDSiでプレイしているのだった。

夜、豚とピーマンのオイスター豆板醤炒め。干し海老入り。へんな時間にごはんを食べたので、夜遅くにたべる。うまし。孫ふたりと祖母という組み合わせで会話をしていると、ずっとしゃべりつづけていた祖母がとつぜん涙ぐみだしておもしろかった。おもしろかった、と書くとまるでわたしが薄情な人間のようだが、そういうわけではなく、あまりにも唐突に感極まっていたのでふしぎだったのだ。何にせよ、こうした暮らしがいまあるということが、祖母にとってはうれしいことなのだろうし、もちろんそれは帰郷するつもりのなかったわたしにとっても同じことなのだった。


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『maybe!』の10号を読んでいると夜が明けて、一定のリズムで鳴く鳥の声がきこえはじめる。カッコウ、と鳴くので、おそらくカッコウなのだろう。まるまる1冊読みおえ、スタジオボイスはもう新号がでないのかなと雑誌文化に思いを馳せつつ入眠し、プリキュア直前に目覚めるもまあ今日は見逃し配信で観ればよいかとふたたび目を閉じる。

マイナスの波長、と書くとめちゃくちゃスピリチュアルな世界に足をつっこんでいるようだが、その波間にたゆたっており、なにもできずいちにちがおわる。夕方にいちど寝室をでて、リビングまで向かうと、祖母が椅子の上で居眠りをしていた。わたしは彼女を起こさないように冷蔵庫から魚肉ソーセージを1本とりだし、それを本日唯一の栄養として噛みしめてから自室へもどった。ねむったりおきたり、よんだりみたりしながら、つぎの日がくるまで横たわって過ごした。

ときたまこのような日がやってくるが、そうするとまるいちにちほとんど食事を摂らないこともあり、プチ断食のような状態になる。ちまたでは健康によいとの声もきくけれど、明け方寝床を這いだして食料をもとめてフラフラしていると、どうもこいつは不健康だなとも思ってしまう。立ちくらみに襲われながら麦茶を2杯飲み、コンロにあった鍋からスープ1杯を椀によそってたいらげ、テーブルの上に置かれていたせんべいの類3種と冷蔵庫からコーラを半ボトルひっつかんで自室にもどった。愛すべきひきこもりの生活だ。ベッドに座ってバリボリし、ガブガブする。リビングにはなにもかもつけっぱなしでソファの上に横たわる父親がおり、やかましいいびきを立てていた。