キャッスル・ハッスル(no process)

『3020』、文句なしの名盤だ。アヴァランチーズのアルバムを並べて2020年のアルバムはこれだといっているひとがいたのでそれも聴く。たしかにグッドサウンド。もういちねんを振りかえる時期なんだなとひねった首が凝り固まってくたびれている。今年はラジオがあるのでそこでなんかもろもろ話そうと決める。秋で映画館もギャラリー美術館通いも切れてしまっているし、音楽も時代を追っていたかといわれると首傾げ、アニメ漫画文学はそもそもそんな数に触れていないというありさまなのでそんな身のある内容にはならなさそうであるが、、単純に今年見聞きしたものでよかったものの話ができればよい。

「つくる」エネルギーがなかなか湧かない。いちど乗ってしまえばガッといけるのだが、乗らない。深夜に起きていることが少なくなったからか?とつくっていたときと比べて思い至る。かといって遅寝遅起きマンになるのもなあとためらう。ブログもラジオもやってるんだから上々じゃないかというわたしもいるが、うるせえと蹴飛ばしてやりたい。そうじゃないのだ。

キム・ギドクが死んだというニュース。『メビウス』しか観たことがないのでそれほど感慨はないのだが、それでも事実だとしたらショックである/加筆:事実のようである……。ユーネクストで観たい映画リストをつくったときに、彼の初期作品もメモっていたのだった。配信終了予定日を見ると明日までとなっており、そして明日は友人たちが遊びにやってくる日であり、おお、と嘆きのピエタになった。こういうふざけをしてしまうくらいには愛着がない。とはいえ、ここで言及させるほどには気になる作家であったことはたしかである。


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東京から友達がふたり遊びにくる。まずは地元民に愛されるラーメン屋を紹介して舌鼓を打ち、風景を見たいということだったので五色沼へ。わたしも行ったことはあるはずだが、そんな記憶は1ミリものこっておらず、はじめて見るようなきもちで湖沼群にのぞむことになる。足の裏で石や木々の凸凹の突起を感じながら山道をすすんでいくと、枝枝の合間から神秘性すら感じる青い湖面があらわれ、ハッと息をのむ。想像以上に幻想的な光景だ。自然の色なのだが、自然とは思えない色の沼地が、ぽつと森のなかにある不思議さ。もはやファンタジーである。たびたび眼前に顔をだす熊出没注意の看板に薄い緊張を高めつつ、どんどん先へすすんでいくと、それぞれ異なる色合いを見せる沼が地をがばときりひらいている。4つ5つ見、雨も降りだしてきたのでさいごまでゆかずにもときた道をひきかえし、桧原湖猪苗代湖へ。そのスケールの差と、餌をくれといつまでもついてくる鴨たちを目に焼きつけ、ホテルへ。チェックインを済ませたあとは、話を積もらすべえと居酒屋へ。道中、4、5店に満席ですと断られ、心が折れそうになるもなんとかいい感じの店にすべりこみ、日本酒をガブする。馬のレバ刺し、ちょうぜつ美味なり。アジの刺身も内陸とは思えないうまさで、へえと思った。ここらの回転寿司はぜんぜんおいしくないのにな。目の前にすわるふたりをながめながら、わたしの地元で、大学からの友人たちと飲んで話しているのがふしぎだった。「アツい話を」と彼らはしきりに唱えていたが、はたしてわたしはそれに応えることができただろうか? 食後は家の近くまで車で送ってもらい、抱擁して別れる。たのしい一夜だ。