不機嫌な雌犬の恍惚

いい感じにまとまった感想の蛇足になりそうのでこちらに書いておくが、『それは誠』終盤の「幸せな」描写を読んでいるとだんだん怖くなっている自分もいた。これはいったい「いつ」の時点で書かれている文章なのか? あるいは、もはやこの文章は「誠」ではなく「妄想」の域に達しているのではないか?と。

新宿に到着後、信州屋でかき揚げ天もりの大盛り。はじめて訪れた。小諸そばのほうが好きだと思いながら完食。今回の滞在ではありつけるだろうか? 紀伊国屋書店を冷やかしつつ、ゴールデン街へ向かって作品の搬入・設営。オープン時間には間に合わなかったがぶじ完了し、ビールを飲みながら来客を待つ。お店のお客さんのほか、展示を目がけて来てくれたのはYさん、Yさん、A、そしてSさん。常連のOさんのほか、閉店間際にはすこし遠い大学の先輩であるTさんらも来てくださり、ハッピーなきもちで初日をおえることができる。とりわけスーパーデザイナーであるSさんの来訪にはただただおどろくばかりで、うれしさがこみあがった。

店主のKさんとは最寄りがいっしょなのでいっしょに帰り、コンビニで水とカップ麺を買ってHQハウスヘ。ふたりはすでに就寝しているようだったので、電気を点けずに麺を啜っているとQさんが起きてきて、しばし談笑する。シャワーを借りて、ふとんにたおれる。

今回の滞在ではほとんどメモを取らずに過ごしていたので朝の記憶があまりない。13時からシネマート新宿でラース・フォン・トリアー『キングダム エクソダス〈脱出〉』を観ているので、それに間に合うように家をで、新宿のたつやで牛丼の大盛りを食し(「牛丼をお願いします」と店主に伝えたら「をお」の音で大盛りと認識され、否定するのもめんどうだったのでそのままオーダーを通したのだった、多かった、あぶなかった)、パンフレットの売り切れをかなしみつつ座席におさまった。1作5時間半の長丁場であるが、2017年にユーロスペースの下のカフェ9で開催されたキングダム1・2一挙上映(10時間!)を経験しているおれにもはや敵はなかった。



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▼排気口/中村ボリ企画公演『人足寄場』フライヤーデザインの制作ノートをあっぷしました

https://www.tumblr.com/seimeikatsudou/712089278740578304/ninsoku
seimeikatsudou.tumblr.com


そんな濃い体験で前作を鑑賞しているとはいえ、1・2の記憶は正直ほとんどなく、ウド・キアーがすごいすがたになっておわったという衝撃だけがのこっている状態での鑑賞だったのだが、本作の主人公となる夢遊病おばあちゃんのカレンが2の最終話をDVDで鑑賞しているという導入からすでに首根っこをつかまれ、おなじみのオープニングソングがかかる頃にはすっかりキングダムの世界に舞い戻っていた。樽が割れてワイン/血が噴きだすイカしたタイトルバックもEXODUSの刻印が追加されてカッコよさマシマシである。カレンが病院の回転扉を通過するシーン、照明のちからによって舞台をげんじつ(?)からフィクション(?)へとシームレスに変化させる演出がバチバチだった。1話目ラストあたりでうたた寝してしまったが、その後はグングンな展開でまぶたをとじる暇がなかった。過日盛夏火についての記事でも触れたが、『第七の封印』、やっぱりいいよね!とベルイマン生誕100年映画祭の折にトリアーがだしていたコメントのことを思いだしていた。曰く、

ベルイマンの作品は一つ残らずすべて観た。電話で話したこともないし、何通手紙を書いても返事ももらえなかった。話したいことがたくさんあったのに、それが叶わず悩んだよ。自分なりに理解して、諦めたんだ。ベルイマンなんてクソくらえだ! 僕にも自分の人生がある。連絡したくないなら、こっちも忘れようと思った。でも彼を敬愛している。悔しいが、僕にとって彼は全てだ。

トリアーは大学を卒業後、映画をほとんど観なくなったとツェントローパ所属のプロデューサへのインタビューでしり、それを踏まえて読みかえすとさらに熱意が迫ってくるようである。

ほか、最終話に登場する無数の亡霊たちには『アンチ・クライスト』のラストを思いだした。『ハウス・ジャック・ビルト』があまりハマらなかったのもあってラースよりもヨアキムのほうが好きかもななどと思っていたのだが、本作を観ることによってやっぱりラースも好き!と思いなおした。特集上映でかかっているエピデミックとヨーロッパ、10月の滞在時に観ることは叶うだろうか?


▼見事にイカれた人物ばかりしかでてこないサイコーのオープニング
youtu.be


シネマートをでたあとはアニメイトへ。ぷにメイト祭りをのぞきに来たのだがめぼしいグッズも新刊の在庫もなく、プリキュアのガシャを回してMHのクリアファイルをゲットして退店。松屋でビビン丼を食べているとYくんから会場にいるとの連絡があり、いそいでかっこんでお店へ向かう。たぶん最後に会ったのは同じく新宿の中華屋で飲んだとき。


▼中華屋の記録
seimeikatsudou.hatenablog.com