許されるかぎり長いあいだ眠った

ウイルス性胃腸炎に罹り、週の前半は暴れ狂う大洪水が上からも下からもやってくる、地獄のような日々を過ごしていた。ふたつの穴から緑の体液がとめどなくあふれ、熱がずっと持続し、水以外体が受けつけず栄養が取れないために、ふらふらになりながら布団とトイレを行き来するだけのまいにち。からだがよわればこころもよわり、音楽を聴く元気がでてきた頃にやさしめの曲を流してみるも孤独感が募るばかりで、こうして文字を書くことで自らの支えをつくろうとしている。漢方の粉末で舌をいつまでも苦々しくさせながら、葛湯が飲みたいが片栗粉がなく、外にでるのが億劫すぎてあーうーうなりつつも、トイレに行く回数の頻度の減少に安堵しはじめている。けっきょく野菜ジュースのお湯割りで茶を濁し、腹がぎゅるぎゅるいうのを感じながら無気力に横たわり、年末年始にふえてしまった体重もこれでもとに戻るかななどと楽観的な考えさえ浮かんでくるのに気づく。しかしなんともいいがたい生への悲観がうっすらとただよって、とはいえ体調のよくなっていく気配もあわせてのぼりたち、この螺旋状の上昇あるいは下降気流が交わるポイントがここ、ここである。

複数の運動がからだのうちにあって、向かう方向がそれぞれちがうので、どちらへ足を踏みだせばいいのかわからなくなっている。よくある話だが、どうすれば? 漸進的横滑りしかあるまいよ、とおれのなかのロブ=グリエがぶつくさいってる。

もう大丈夫かなと牛乳と醤油で豆腐と卵と白菜を煮たものを口に入れたのだが、ひさびさのしょっぱみに匙がとまらなくなりつくったぶんをすべて平らげたら(けっしてたいした量ではないのだが)胃がはれつしそうに痛い。訪れるこうやって生きていくんだねえというなぞの感慨。2時間経っても圧迫感がつづいている、しかし腹は下していない、健康サイコーラブヘルシー。ラムネが主食だ、宿酔にも効くんだこの錠剤、噛み砕いて、きみは記憶喪失者、錠剤、噛み砕いて、きみはミルク飲み干していこうぜ、、


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排気口『怖くなるまで待っていて』、ついったで書いたことへの補足として書きおく。これはアンケでも書き殴ったことだが、とにかく役者のすばらしさがよくあらわれていた。ゆえに、観おえた直後は活躍していない役者の存在に気を取られもしたのだが、しばらく経ってみるとそれはそれで戯曲とよい調和をなしており、これはこれでよかったのだというきもちになる。周囲と並べたときに浮かびあがる異質さを、テキストレベルでも演出レベルでもなく演技のレベルで体現する、それが貞子であり、村本だったのではないか。声という観点から見れば、ププ井とボンバが頭抜けており、巧さという点では女とゼミ長がひかっていた。近年の公演を見るたびに思うのは、排気口所属の役者がどんどんよくなっているということで、外部での公演や日々の稽古のなかでずいぶんと磨かれているのだなと、宣伝美術として併走している身としてこころづよいきもちになる。こちらもさらに研鑽を積まねばと思わされる。

ちいさなわらいを積みかさねてくりひろげてゆく物語の展開力も申し分なく、その土台となる話のスケールがさらにおおきくなったとき、さらなる飛躍が達成されるのではと観ていて思った。時間差で観客の心中において作動していく台詞の巧みさには、もっと縦横無尽にあばれまわることのできるポテンシャルがある。劇団としていまとてもよい時期にあるのではないだろうか。今年はすでにふたつの公演が決まっているようで、このままの勢いでさらにひろくポピュラリティを得てほしいと思う。


bombay bicycle clubの新譜がよい。とくに「eat, sleep, wake (nothing but you)」がたまらない。lovingも気だるくチルくてべりぐっど。一方algiersがあまりよくない。前のアルバムにあったひりつくようなテンションで吠え立てる荒々しさが消えてしまって、あれという感じ。暴力にみちた、かといってハードコア/メタルではなく、ポストパンクなバンド、いないでしょうか。