だれもあなたを思いだせないままだね

排気口『暗愁行尸』。おもしろかった。かなりふくざつなことをやっている!と思った。それはゴールデン街劇場時代に見られたような構造の入り組みで、しかし、「怖い話自体が意志をもつ」という話の核は複数回にわたって劇中で言及され、そのバランスがいまだからこそできる技巧に思え、ぜつみょうだった。至るところにちりばめられているインターネットミームも、この主題によって回収されるもので、元の事実(元ネタ)が流通の過剰によってのみこまれる(忘れ去られる)のはじっさい、よくあることだ。ここに資本主義の問題を横たわらせている点が、鋭利である(Hさんは社会的でない、と自嘲的に言っていたが、まったくそんなことはない! 排気口作品における「貧しさ」、堀り甲斐のあるテーマだと思います、いつか誰か書いてください)。金がないというバックグラウンドと、恐怖を求める心が同じ顔つきをしたものとしてそこに二重化されるおそろしさ。ホラーの流行に貧しさが一役買っているのか?とこれを書きながら思った。恐怖を求めるでいえば、「もっと恐怖を!」とホラー演劇をたのしむわたしたち観客のすがたが、「もっと死を!」と他人の死を欲望する登場人物にかさねられるシーンの厭らしさもきょうれつだった。

照明の繊細さがかなり活きていた。テレビなしにテレビを見、車なしに車に乗れていたのは確実に光の支えがあったからである。しかしそれも役者というスクリーンがあってはじめて成立するシークエンスである。暗闇でテレビを凝視し、夜道を真顔で走り抜ける広野健至の好演は印象的だった。怪演、にならない程よい不気味さが作品のムードにマッチしていたように思う。東雲しののひょうきんなヘルパー役には新境地を感じ、おもしろく見た。「正常」な地点からのズレを感じさせる路線での演技、大いにありなのではないか。

演出のキレにも感動し、演出がすごい!と打ち上げの席で叫んだのはおぼえているが、これを書いているいま、どこにこころうごかされていたのか思いだせない(記憶力のおわり、さいきんもSさんとQさんといっしょに『クリーピー』の話をしていて、なぜそんなにおぼえていられるのか!と驚嘆したおぼえがある)。唯一思いだせるのが、叫び声(泣き声?)が聞こえるんです、の話に、異なる時系列からポえちゃん=中村ボリの悲鳴がインサートしてくるシーン。全体を通してあそこがいちばん怖かったと話すと、演じている役者陣はコミカルなものとして捉えているようで、「え、あそこが?」という反応をもらったが、それ単体としてはコミカルなシーンであるからこそ、ホラーな文脈に接続された際の恐怖も際立つのではないか。怖さのタイプでは『人足寄場』の方が自分にミートしていた感があったが、今回はその恐怖をくりだす「技」に感銘を受けている感覚があった。


▼『人足寄場』の感想
seimeikatsudou.hatenablog.com


観劇後はOくん、Tさん、Sさんと焼き鳥屋へ。みんなの感想をウンウン聞く。ポえちゃんの終着点に対する解釈がずれていておもしろかった。のち、打ち上げに合流。一次会でQさんとともに引き上げ、家で再度焼き鳥屋のメンバー+Tさんも呼んでギターを弾きながらクイズなどやる。4時頃に限界を迎え一足先に就寝。

5日目。よく寝、Qさんとアジカンピロウズをセッションし、帰路につく。Qさんに預けているグレコのベース、想像以上にオンボロだった。


五十嵐耕平監督特集「青春的故事」のチラシおよびポスターデザインをやっています、9/20-10/3、シモキタ-エキマエ-シネマ K2にて、ぜひお運びください!


▼詳細は以下より

https://www.tumblr.com/seimeikatsudou/760135866880540672/youthfulstories
seimeikatsudou.tumblr.com


帰宅後もワーク漬けで書く習慣が消えつつある。

松岡正剛死去の報。さいきんは追っていなかったが、わたしが編集に関心をもつきっかけになったひとりであるので、それなりにショックを受ける。『遊』はいまだに自分のなかの「雑誌」の象徴としてある。その形容としての「オブジェ・マガジン」という語。おれも「もの」をつくって生きていきたいんだ。

ニャンたちを吸い吸い、がんばりつづけてきたワークがだんだん落ち着きはじめてブログも書けるようになってくる。グラフィックもつくる。明日にはベースも弾けるようになるのではないか。

夜、しらすオムレツ、鶏出汁あおさ汁、茹で鶏わさびマヨ和え。うまい。昨晩つくったモロッコインゲンと豚肉のにんにく青とん炒めもベリナイス。

ワークワーク。だいぶ収束に向かっている。

わんぷり29話。ニコ様復活およびガオウ登場回。ニコ様の(再)誕生に同期してすがたをあらわす敵のボス・ガオウという構図はMHのシャイニールミナスと「あのお方」の関係性を彷彿とさせるもので、MHマラソン中の身としてはグッとくる展開。アバンの尺がかなり長く取られていて、それだけで「いつもと違う感じ」がでており、ここまでひた隠しにされていた敵ボス&幹部ふたりが一気に登場という流れを準備していた。バトル時、不穏BGMのまま犬から人間へとチェンジするこむぎのシーンでなぜかわたしはなみだを流しており、これまでに摂取してきたプリキュアの歴史がめちゃくちゃに作用している!と思った。ボロボロになって変身解除状態となったいろはたちを助けに生身で駆けだす悟くんのすがたも泣ける。何より特筆すべきは、人間たちによって絶滅させられたオオカミを敵に据えるという構造的なすばらしさである。これまでつねにポジティブに振る舞っていたいろはが、その事実を突きつけられて心がくだけてしまうシーンのつらさ。まちがいなく中盤のピークとなる回だった。ニコ様に挨拶をする際のまゆの緊張した声音の巧さもよかった。脚本は成田良美、絵コンテ・演出は畑野森生。

夜、鶏豆腐、味噌マヨラー油きゅうり。うまい。

本の整理をしているとアクスタが落下し、土台がひとつ消滅する。こういうとき、どうすればいいんですか?? 100均でどうにかなりますか??