ボイル・フラッシュ

ふたたび銀座でギャラリをめぐる。菊地敦己@g8、ryu ika@gg、tdc@ggg。g8、ヌケのよさに先立つ、縛り/フレームの選定。そのカコミとスキマがきもちのよい紙上効果を生みだす。高級感、エレガンス、重厚、みたいなものをもとめられていそうな案件がすこしだけあったが、それはミスマッチに見えた。チェルとのものもちょっとちがう? とはいえそれらは些末な問題で、1時間弱、じっくりと堪能した。gg、監視社会的なテーマと、藤原聡志みがあるでかでかフォト・オブジェクトがよかった。映像作品が1本あるとまた印象がちがったのではないか。ggg、「The Library of Nonhuman Books」というプロジェクトがめちゃくちゃよかった。Karen ann Donnachie(カレン・アン・ドナチェ)とAndy Simionato(アンディ・シミオナト)の二人組による作品で、任意の本をAIに再解釈させて、文章を虫食い状態にして新たな文をそこに浮かび上がらせるとともに、Googleから引っ張ってきた画像を挿絵として挿入し、まったく新たな本をパブリッシュするというもの。人力でやりたい。

夜、ゴーヤ豚炒めにチーズを載せたもの、キムチ、ボイルソーセージ。赤玉ポートワイン

音夢花火、通信制限下でとぎれとぎれに観たけれども、セトリサイコーすぎないか?? DVDももってるけれども、実家に置いてきているのでめちゃひさびさの鑑賞。唯一絶対、我が魂のバンド、ザ・バックホーン。その2004年の、ぶっきらぼうで、切実で、少年の面影さえのこるきらめいた勇姿が、夏の夕闇のなかに刻まれていた。


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ブックスマート、勉強漬けのままティーンの終わりを迎えようとしていた仲良しガールズ。卒業目前に一念発起、これまで無縁だったハチャメチャパーティに殴りこみ。「大人」のいない「神話」的な一夜を、身も蓋もないラブと速度で駆け抜ける。PC時代の過渡期における、無敵のふたり-ウーマンスの最新形

グレタ版若草物語や本作への白人特権批判(ホワイト・フェミニズム)はなるほどなと思うと同時に、その指摘によって作品のもつ普遍性までもが毀損されてしまうのか?と反発してしまうのは甘いのでしょうかね。ポリコレロードは修羅の道。こと人種や階級が隠蔽されている日本ではよりけわしさを感じます

ブックスマート、さらにはホワイト・フェミニズム(というよりもポリティカル・コレクトネス?)の話をすこしする。上記はついったに投げたもの。ふたつめはもともとは若草物語を観おえた際についーとしようと思っていたのだが、ちょうどこれから観に行きますといっていたひとに水を差すようなことになってしまうのではと自重していたのを、今回の作品も同様の指摘を受けていたので改稿して投稿したのだった。もともとは、「ひとりの人間がひとりの人間として生きることを獲得していくというメッセージの普遍性はそのことによって毀損されるものではないのでは」という語がそこには記されていた。

あらゆる作品が、そのあらゆる部分において、「いまの時代」の「政治的正しさ」に適合せねばならないのだろうか? これがわたしがまず思ったことだが、安易に結論をだすことができない問いである。もちろん、その態度はあらゆる制作者がもっているべきだし、グレタ・ガーウィグオリヴィア・ワイルドがその姿勢を有していないとわたしは思わない。こうした「意識の高い」「白人」「女性監督」(の作品)に対して、「ホワイト・フェミニズム」と断ずる声をあげるひとらに反発する意識をもってしまうのは、そのあたりが関係しているような気がする。その非難するさまが、重箱の隅をつつくように「見えて」しまうということだ。じっさいに重箱の隅なのかと問われれば、やすやすと肯けないところがまたむつかしい。「断ずる声」自体はわからなくもないのだ

さらには、わたしの内なる差別意識も、そのきもちの生起に関係しているだろう。「彼女たち」はポリコレに反するものをつくっているわけではない、むしろ沿うかたちのもの生みだしているだろう、というわたしのきもちは、このカッコ内へのジェンダーバイアスによって、ひとつの判官びいきの様相をつくりだしている点は否めないかもしれない。だが、そこに見逃されている存在がいるからこそ白人特権だと指摘されているわけで、複数の網がここにはかけられている。そこから漏れたものたちの代理人としての声。だがはたしてそれは純粋な代理表象なのだろうか?

「これがPC最先端」というような、「富裕層」かつ「インテリ」の「白人」たちのかもしだす空気感に対しての反発ということならわかる気もしてきた。タイムリミット(24:00)が迫っているのでこんな中途半端なところで筆を擱くが、こういう話もいつかダイアログでテーマにしてみたい。ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』を買ったので、とりあえずそれを読む。