ベイシックの石

サンライズの公式チャンネルで高橋良輔ガサラキ』(1998)が公開されていたので2話まで観る。12-3年ぶりの再見。超常的なエンドと西田先生のことばかりが思いだされる。あとは「インパクト」か。第1話、絵コンテがマジでキレている。反復のつかいかた、同一フレーム内での人物のうごき、所作のディティールにリキを入れた芝居、それらをまとめあげるカットさばき。村瀬修功ラブだと思った。TAの駆動音もサイコー。2話では「ニュース番組」をつかって作中の時代背景が語られるが、その分量におどろいた。いまのアニメでここまでの時間をつかうことは不可能のように思う。バックグラウンドとして提示されるのは中東地域でのNATO介入で、コメント欄やチャットではウクライナの名前をだすひとのすがたも散見されたが、構図はまったくちがっている。帝国主義という言葉が作中にもでてきたが、ここに描かれているのはまさに「帝国の論理」とそれに抵抗しようとする小国のすがただろう。2022年現在の東欧に目を向ければ、ロシアが帝国であり、ウクライナが小国であることは似ているが、本作におけるNATO-西欧の立ち位置は帝国サイドである。

夜、豚バラレタス長芋味噌炒め。うまい。妹のつくったそぼろも食べる。うまい。

デザインワークひとつフィニッシュ。

夜、卵と干し海老のスープ、ブロッコリとハムのおかかチーズ和え。うまい。

イデオンの前半がおもしろくない」という意見にかなりの賛同があつまっていておどろく。おれは第1話の時点からおもしろいおもしろい観ていたので……。前半がつまらないと聞くとわたしは水上悟志惑星のさみだれ』のことを思いだすが(大学時代、「3巻まではおもしろくない! だが!」と言ってサークルの友人たちにすすめていた記憶)、ここで言われている「つまんない」はそういうおもしろくなさともちがう気がする。つまらなさの内実をもっと言語化してくれよと思う。


f:id:seimeikatsudou:20220331213649p:plain
485


西尾大介ふたりはプリキュア』(2004)17-20話。線路が微振動するさまを引き画でとらえることで電車が来る(なぎさたちが電車に乗って畑に向かっている)ことをしらせるカットがげきれつにカッコよかった。一瞬何のカットなのかわからなかったのだが、がゆえに、すごいことをやっているなと印象にのこった。絵コンテ・演出は岩井隆央。同時にボタンに触れることによってふたりの相性度をしらせてくれるアイテム「プリズムラブチェッカー」を試してみませんかと藤P先輩に言いだせず、しょんぼりしたなぎさが歩いている場面で、背景に傾斜がかかっているのもすばらしかった。下り坂の感情!

いっしょに農作業をするキリヤくんへのきびしさに対して、「ほのかちゃん、そういうところちょっと怖いね」という木俣先輩に、「そんなことないです!」と即座に否定の言葉をくりだし、「あれはほのかのいいところだと思います」と言い切るなぎさがめちゃくちゃよかった。ふたりの絆の深まりがうかがえる名場面だ。また、農作業を通して「人間観」のぶつけあいをするキリヤとほのかの応酬も見どころのひとつ。協力しないと何もできない/協力するからこそ何でもできるという対立は、ほのかとはなればなれになってしまったなぎさに対する「1人じゃ何もできない」というポイズニーの台詞への布石にもなっており、ひじょうにグッときた。脚本は成田良美。マジでラブだ。もしシナリオ集がでたらかならず買う。

つづく18話では、ほのかに感化されたかに思えたキリヤくんが、引っ込み思案な女の子・聖子が勇気をふりしぼって手渡した告白の手紙を読みもせずにビリビリと破り捨てる描写が描かれており、思わず胸が痛くなった。その話を聞いて激昂したほのかに対して「ぼくのことを何もしらないくせに!」と彼が叫びかえすのもよかった。そう、キリヤくんはほのかにこそ好意を抱いており、そんなほのかが聖子の告白の応援をしていたことに苛立っているのである。このようにして「恋」が作品に流れているのは近年のプリキュアではあまり見られないことで、色恋がドラマをつくるダンバインなんかが好きなわたしはめちゃくちゃテンションがアガっている。ファンのあいだでは評判のわるい『ハピネスチャージプリキュア!』(2014)は恋愛要素がつよいらしいのでひそかにたのしみにしている。監督はハトキャの長峯達也だし、脚本は成田良美だし、これまた巷では人気のないキャラデザも好みだし。

鏡をつかったバトル演出もカッコよく、戦闘シーンがちゃんとアクションしているのはうれしいと思う。これも近年のプリキュアが比較的弱いポイントではないか。トロプリ短編映画におけるサマーのインパクトばつぐんの変顔の元ネタが、今回のなぎさの空中落下時の顔だったというのをしれたのもよかった。

OPを毎回飛ばさずに観ているのだが、今回あらためてすごいと思ったのは、はじまりからおわりまで、なぎさとほのかのふたりがたったの一度も目を合わさないという点である。そして、そうであるがゆえに、想いあうふたりの絆がわかるという絵コンテになっているのだ。第1話本編でも印象的に使用されているふたりがすれ違うカットが1曲のなかで2回でてくるが、傷だらけになったふたりが瓦礫のなかで手をつないで立ち上がるシーン(ふたりを同一フレーム内におさめる前にソロのカットがあるのもおおきなポイントである)を経て、縁側で夜空を見上げるほのかのカットを経由し、夕暮れどきの電車内で車窓を眺めるなぎさの直後に2回目が置かれているのである。こんなにすばらしすぎていいのか、、

19話はサブタイで「ドツクゾーン最後の切り札」と称されるイルクーボがはじめて来襲する回。同じく敵組織ドツクゾーンに属するポイズニーにビビらせることによって彼のつよさをわからせる演出・テキストが冴えていた。窮地に立ったブラックとホワイト、さらには喧嘩中のミップルとのやりとりを経たのちのメップル特攻のアツさは燃えるものがあった。

20話。ほのかがふたりでてくる回。本作には偽物や分裂がでてくる回がけっこうあるな、と思った。なぎさが本物を見分ける際に、「なぎさの靴下はちょっとクサい」というほのかの言葉によって気づかせるのはあまりにも神すぎる演出だと思った。これは8話に登場したプリキュア手帳に書きこまれた文言である。絵コンテ・演出は小村敏明。SS-5gogoとのちに3期にわたってシリーズディレクターを務める人物である。

今回はポイズニー退場回でもあるが、その戦闘の苛烈さは目を瞠るものがあった。とりわけ、長大化した彼女の髪の毛に身を縛られ、壁を削り取るようにしてブラックとホワイトが叩きつけられる場面は鮮烈。そんな逆境を覆して最終的にプリキュアたちは勝利するわけだが、真っ先に姉の消滅に勘づき、涙を流して慟哭するキリヤくんのエモーショナルさにもやられた。人間性が獲得されているのである。次回予告がヤバだったのでつづきはまた今度にする。