何を言い聞かせようとしているのか教えてくれない(サボテンの針をすべて爪の先で抜きとる)

ちほちほ『みやこまちクロニクル』(2021-)20話。糞を漏らし、その処理を家族にさせて、自らはだまっている老父に激昂して主人公=作者本人が怒鳴りつける場面、胸がきゅうとしめつけられた。そうなんだよなと思った。自分と祖母の関係性をそこに見た。翌日に反省しているさまも身につまされる。

Mikikiに掲載されている吉田豪によるクリトリック・リスへのインタビューの以下の記述におおわらいする。人生2回目のライブのふりかえり話。

「僕の出番が最初やったんですけども、〈やっぱり順番を変えてくれ〉と言われて。僕、自分が出るタイミングに合わせてベロベロに酔っぱらってたんですよ。2時間前に会場入りして」

――シラフではできないですもんね。

「せやのに、出番が後ろのほうになったんですよ。それでもワーって呑み続けて、気付いたら楽屋で寝てもうとったんですね。で、ライヴハウスの人が〈出番ですよ〉って起こしに来てくれて。そしたら、自分で持ってきたパンツがどこにあるかわからんくて、もう全裸でおちんちんを隠しながらステージに行ったんです。このときには自分でサンプラーを買ってたので、そこにいろんなアニメの名台詞を仕込んでおいたんですけど、パンツも見当たらんし、とにかく出なアカンってことで、もう何もかも飛んでしまって」

――寝起きだし、泥酔してるしで(笑)。

「SEもなくてシーンとしてるなか、おちんちんを抑えながら出て行って、サンプラーのボタンを押そうとしたら、足がもつれてサンプラーの台に頭をぶつけてしまったんですよ。その台と一緒に倒れ込んでしまって、お客さんも〈なんやなんや〉とザワついてるけど、起き上がろうにも寝起きやし、お酒も呑んでて血も止まらへんし。なんとかせなアカンともがいてたら、サンプラーのボタンが肘に当たって、なんか知らんけど音量もマックスになってたみたいで、一休さんのエンディング前に流れる〈おもしろかった~? じゃ~ね~〉ってのが爆音でかかったんですよ。その後にブワーッとゲロ吐いて」
(Mikiki「吉田豪が直撃! クリトリック・リス、社会人時代からアルバム・デビューまでの〈どうしてもスカムになってしまう〉半生を語る(前編)」より

なんど読んでも「〈おもしろかった~? じゃ~ね~〉」のくだりで声をだしてわらってしまう。ひさびさに文章でここまでわらった気がする。

デパプリ1話。主要な登場人物をその性格を含めてあらかた紹介し、主人公に変身させるそつなく隙のない初回。ゆいが画面に初登場する際にサッカーをプレイしているのは、同じくグラウンドでラクロスをプレイしていた初代プリキュアなぎさへの目配せのように思えたし、じっさい、戦闘場面では壁着地シーンもあって歴史への言及をつよく感じた。そもそも作監稲上晃である。20周年に向けた回帰の意気込みを感じる。史的ということでいえば、エイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』(1925)ネタまでも盛りこまれてあり、これはプリキュアにかぎらないことかもしれないが、引用の手腕がふるわれていた。ブンドル団のかけ声である「ブンドルブンドルー!」には、初期のプリキュア映画のなかによく見られたワードセンスが開花しているように思った。

キュアヤムヤムことらんの一人称がらんらんなのがよかった。マリちゃんがたたかえるのも新しさを感じる。縮尺変化やくずし顔が多用されるのもたのしく、トロプリに引き続いて愉快さが押しだされるのはうれしい。ほか、レシピッピを奪われたことによって味が変化したオムライスを形容する言葉として、「まずい」とか「おいしくない」という言葉をぜったいに用いないことにきょうれつなプリキュア倫理を感じた。味が変わった、変な味……と放たれるリアクションに違和すらあった。

バイス21話。ヒロミさん……となるが、ついったの反応を見ているとあのおわりは生存ルートらしく、仮面ライダー演出の勉強になった。新組織ウィークエンドの登場に第2部スタートの兆し。ずっと引っぱってきた温泉旅館回の意味ありげな牛島一家の正体がいまようやく明らかに。布石の置きかたどうなん?とは思いつつも、関係図の複雑化をたのしんで観る。

ゼンカイジャー46話。デリシャスネタの被せにまずわらう。1話に3回敵戦がある構成になっているのだが、そのうち敵が「またかと思ってるな、俺も思ってる!」と言い放つくだらなさにも笑みがこぼれる。予告での「最後の勝負だ!」「来るのが早いわ!」という敵ボスとのかけあいまでもふざけたおしている。

夜、大根の味噌汁、椎茸と人参入り鶏ごぼう・塩味。うまい。


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ハネケについて調べていると、ライリー・スターンズ(Riley Stearns)という監督の名前に突きあたる。今年のサンダンスでかかっていた『デュアル』(2022)のレビュー記事には、ハネケのほかにもギリシャの奇妙な波(Greek Weird Wave)に影響を受けているとあり、ランティモスも好きなわたしはぜひとも観なくちゃならんだろうとその名をメモる。過去作である『The Art of Self-Defence』(2019)が『恐怖のセンセイ』というヘンテコな邦題をつけられユーネクストで配信されているようなので、ちかぢか観ることにする。

寝起きにブレンパワードのもっとも著名な回であろう第9話「ジョナサンの刃」がBlu-ray BOX発売記念に公開されていたので観る。ボロ泣きする。日本のインターネット空間では主にネタとして消化されている節があるが(初見時、ネタ化をしらずに観ることができてよかった)、マジで傑作だ。テキストも演出も鬼のすばらしさ。母親とはけっしてわかりあえなかったジョナサンが、クマゾーに対しては関係性をつくることができることの希望。いつ買おうか迷っていたボックスをその感動の勢いにおされてポチった。春に観かえす。