第4回激痛クラブオフラインミーティング

たいていのひとはゼロかヒャクかでしかものごとを見ることができない。そのことが炎上、とくにイデオロギーのつよく連関した騒動のたびに目に入り、憂鬱なきもちになる。わたし自身のなかにもゼロかヒャクかという判断をしてしまう心向きがあり、だからそうした言説の数々に自らの片鱗をも看取ることになる。何年か前のわたしはしきりに宙吊りやらあいだやらの概念を好んで用いていたが、そのことが思いだされる。その位置に耐えることはむつかしい。

トロプリ45話。とうとうラストバトル。戦闘シーンの作画! 線と影の描きこみが桁違いでわらってしまった。29話のようなうごきのすごさというよりも、リミテッド感が強調された演出がなされていて、ほぼすべてキメ画のような一枚絵のインパクトがきょうれつだった。瞬間にはさまれるエフェクトも茶目っ気があってイカしている。担当は芳山優。バトラーに反旗を翻してプリキュアサイドに立っての3幹部の活躍もうれしい。土田豊テイスト全開のパパイア光線や、キュアオアシス大活躍のトロピカルパラダイスもたのしく、次回予告を見るに最終回もそのユーモアがさくれつしそう。海溝に落下したプリキュアたちが交わす「勝った先の未来」しか見ていない会話、すばらしかった。トロピカる部が学校中から頼られる存在になっているのにも頬がゆるむ。「今一番大事なこと」を突き詰めてきた結果がここにはあり、「あとまわし」に打ち克った彼女たちがローラとの別れに直面するというフィナーレはうつくしいと思った。グランオーシャンが海面に上がってくる場面、オルファン浮上だ!と思って観ていたが、ついったをながめるとそんなついをしているひとが複数おり、うれしくなる。

バイス19話。予告テロップの「ヒロミ、最期の戦い!」にすべてをもっていかれる。来週はプリキュアの最終回ということもあってロス感のつよいニチアサになりそう。

ゼンカイジャー44話。敵の光線によってSD人形と化すゼンカイジャーの面々。やりたい放題やってるよなと思う。

水上悟志惑星のさみだれ』(2005-2010)アニメ化の報。オッとなるが完結が12年も前というところにびびりちらかす。うる星やつらリメイクもそうだが、リバイバルの時代という感じがする。縮小再生産。

「原作の最後までやります」とアニメ版のシリーズ構成も務める水上がコメントをのこしているが、そうすると原作踏襲スタイルでの映像化となるのだろうか。駆け足1クールでなく、2クールは尺をとってやってほしいけれども。ピロウズが関係してくれればうれしい。


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ジョン・カサヴェテス『ハズバンズ』(1970)。嫌なおっさん感がつよく感じられ、ちょっときつかった。好きな作家たちが好きだといっている作品だったので、観るのをずっとたのしみにしていたのだが、いざ鑑賞してみると、本作で描かれる男性性の有りさまは目にあまるものだった。とくに酔っ払いたちの歌バトルのシーン、そのくだらなさと不毛さがホモソーシャルな悪ノリにスライドしていく様子はだいぶくるしい描写だった。本作は友人を亡くしたことによるはげしい躁鬱的なエモーションに衝きうごかされて空元気に遊びまわる中年男たち3人の話で、だからそこに身勝手なふるまいの理由をむすびつけることもできなくはないのだが、都合がよすぎる解釈だと思った。それは混雑する出勤の時間帯のバスにちょうど3人ぶんの座席が空いているくらいにご都合主義的だ。

かといって、ひどい作品なのかと問われればそれはちがう。今日は飲むぞ!から酩酊状態への接続、ベッドから大雨のヘンリーズスープキッチンに移行する場面、ラストの帰宅のシーンといった箇所に見られる躊躇のないカットの断ち切りぶりや、電車内のくだらないやりとりや街中でのエアバスケといった3人のコミュニケーションの他愛のなさはすばらしく光っていた。3人がそれぞれのスタイルで今夜の「女」を見つけようとカジノで物色する場面、老獪さをたたえた女衒風の老女が声をかけてきたアーチーに対して逆に誘惑する際の顔芸もきょうれつでわらえた。しずかに涙を流しながらもうれつなキスをするチャイナガールのシーンも美しかった。

夜、卵スープ、鶏と玉ねぎと人参のカレー粉&タマリンド炒め。

渡辺信一郎夏目真悟スペース☆ダンディ』(2014)14-17話。宇宙ひもをシーズン始めに配することでパラレル展開を示唆させているのだろうか。前シーズンにイデオンモチーフのロボットが登場していたが、いよいよコスモとバッフ・クランの機動メカが画面にあらわれ、このイデオン推しはどこまでつづくのかと思った。平行宇宙から無数のBBPトリオが集結する回で、クレジットを見るまでは同一人物が当てているとはわからなかった声優の声のつかいわけに感動した。アバンのナレーションをオチにつかうテクニックがめちゃくちゃカッコよかった。ナレーションといえば、15話でのカピバラとのかけあいもわらった。

湯浅政明が脚本・絵コンテ・演出・作監を兼任した16話では、ジェスチャーシーンのSEのおもしろさに目を瞠った。おそらく大平晋也が手がけた滝登りシーンの作画もすさまじかった。いまぴあで連載されている湯浅のインタビューを公開されるたびに読みすすめているが、やっぱりおもしろい作家だなとあらためて思った。17話の特訓シーンは『トップをねらえ!』(つまりは元ネタがほかにあるわけだが)のパロディだろうか? プロムのダンスシーンのぬるぬるしたうごきも印象的だった。