いいよ、ってきみはいう(晴れ時々曇り)

東京行きの日程を決定する。こうやってスケジュールを自ら立てるのが苦手である。先の予定を決めるのが嫌いなのだ。なにごとも、できるだけ時間の余裕がある状態で、その場その場で決めていきたい。だから「予約」が必然的に絡んでくる「旅行」に対して、抵抗感がある(旅自体は好きである、無計画で旅立つたのしみ、目的なく街を歩くことのよろこび)。

夜、タコの唐揚げ。市販の焼肉のたれ、にんにく、マヨネーズに漬けこみ、揚げる。片栗粉がなかったので小麦粉で。べちゃついてしまったが、味は○。昨日の味噌炒めとともに食す。

SNS上で「怨嗟」の声を見るたびに、ついったやいんすたなんて辞めてブログをやられい!というきもちになる。自身の感情をぶつ切れの言葉に託して「流通」させることよりも、ある程度のながさをもって言語化、つまりは「記録」したほうがずっと快癒や発展につながるのでは、と思うが、当事者からしてみればこんな考えは余計なお世話に過ぎない。ただ、「いいね」を丸薬にしてしまうのはつらい道だと思う。

ベース視点からマニヘブをふりかえる岡峰の動画のアーカイブを観(聴き)ながらテキストを書いたり読んだり漫画を読んだりしていたのだが、おわりぎわに飼い猫であるマタの死を語るくだりになって意識が映像に急激にひっぱられ、そのひきこまれ自体にこころをうごかされた。なにか切実な問題がひとのくちから語られるとき、そこには明確に他者を惹きつけるちからが宿るのだと思った。かつて役者自身の抱える問題を「告白の形式」をつかって舞台に載せた作品を観たことがあって、そのときはまったくこころがうごかされなかったのだが、このちがいはなぜなのかということは考える余地があると思った。岡峰の動画のふとこぼれるような感じ、ベンヤミンならアウラとでもいいあらわすだろうその不用意な口ぶりが、身ぶりが、わたしの関心をきょうれつにアトラクトした。

無料公開されていたので、橋本悠『2.5次元の誘惑』を1話から最新話まで読む。おもしろい。最序盤はお色気全開のエロコメディであまり惹かれなかったのだが、ついったのタイムラインで見かけた紹介文に「キャラが増えてきてから尻上がりにおもしろい」とあったのでつづけて読んでいくと、なるほどたしかにおもしろく、一気に最新話まで読んでしまった。これはジャンプ系エロコメの皮を被った『同人女の感情』(『私のジャンルに「神」がいます』)だと思った。わたし自身は二次創作にあまり関心がなく、ゆえにコミケにも行ったことがないのだが、こと創作に関してはコミティア育ちの出自をもっているので、フィクションのなかで描かれる同人文化への熱意はわたしをひどく魅了するのだった。そしてこの作品に流れるオタク感はファミレスラブコメの傑作・桂明日香ハニカム』に通じているのだと文化祭回のおわりあたりで思い至った。キャラ立ちのテイストもどことなく似ている。「好き好き」を前面にだしつつ、それを受けとってもらえないみかりんがラブい。これが負けヒロインの魅力か。『ハニカム』では鐘成推しであり、『∀ガンダム』ではソシエ推しであることが思いだされる。あらためて気づかされる自身の嗜好。

天原masha『異種族レビュアーズ』も無料公開されている3巻あたりまで読む。アニメ放映時に炎上(?)していたおぼえがあるが、この感じでも槍玉に挙げられるのはキツイなと思った。題材がエルフ、天使、スライム、サキュバスといったさまざまな種族の風俗店レビューをするホモソーシャルな男たちなので、構造的にはポリコレに引っかかるものではあるのだが、じゃあこれがミソジニーでありセクシズムなのかと問われるとちがうんじゃないかと思った(もしかしてそんなことはだれも言っていない?)。性的な表象のテレビ放映の倫理ということになれば、まあわからなくもない、のか……? 炎上を追っていなかったし、読みおえてもあらためてしらべるような情熱も生まれてこなかったので思考はここらでストップする。


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ウィリアム・ユーバンク『シグナル』(2014)。つまんない話なのにおもしろい映画になっているのがふしぎだった。いや、他人にすすめるほどおもしろくはない。けれども、ヘンテコ映画が好きなひとには一見の価値はあるのではないか、と思わせられる野心を映画のなかに感じた。青春ロードムービー→POV風スリラー→無機質系感染SF→脱出劇→感動バトルアクション……とジャンルを次々に横断していくさまは、真相をひっぱるだけひっぱるスタイルと相性がよく、その変転ぶりによってドラマがつくりだされていた。展開で作品をつくっていくスタイルはリンチの気配も見いだせるが、テイストがちがう。いなたさというか、土っけがあるリンチに比べて、本作には都会志向・無菌感がある。なお、アメリカの大衆紙『USA TODAY』でユーバンクを紹介する記事ではキューブリックとリンチが引き合いにだされていたそう。

主人公がUFOキャッチャーのやりかたを少年に指南するシーンがファーストカットに採択されていることにもあらわれているが、「象徴性」がひじょうに素直に作品のなかにきざまれており、作中ではトラウマとしての「渡れない河」が幾度も反復されたり、にどともどることのできない遊園地での「回転運動」が複数回フラッシュバックする。ゆえに、ラストの「直線的な疾走/突破」がひかるのだが、じゃあ上記の演出が効果的だったのかのと問われるとどうか。気概ほどは成功していなかったように思った。

細部に目をやると、主人公が寝ているあいだに義足に人体改造されているシーンがあるのだが、そこですぐさま陰部はどうなっているのか?と確認する動作があるのがよかった。あまりユーモアのない映画なのだが、そこには茶目っ気があった。プロップや照明における赤と黄色とカラーリングも目を惹き、無数の場面でそのカラーが採用されているので、画面にあつみがでていた。視覚的な連関をむすべる色を配することで、観るひとが勝手にそこに意味性・記号性を見いだすというわけである。マトリックスのモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)の存在感も見どころ。

夜、ワラサ(ブリ)フライ、わさび菜タルタル添え。豚ねぎスープ、煮干し&あごだし。うまい。衣は卵・小麦粉・酒・塩のバッター液+パン粉。低温でじっくり揚げる。タルタルは茹で卵・わさび菜・塩・マヨネーズ・蜂蜜。魚によく合う味。