泣いちゃう素振りのあんみつ会議

引き続きプリキュア映画マラソン

大塚隆史『映画 プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ! 世界をつなぐ☆虹色の花』(2011)。えりかの便利さよ、と思ってしまう随所での活躍ぶりにわらう。これは今後のクロスオーバー作品でも見られることだが、来海えりか/キュアマリンの存在が、ひとつの起爆/潤滑剤として映画に彩りを与えていた。登場するプリキュアの数も21名といよいよ多くなってきたが、その全員がいちいち悲鳴を上げて飛んでいくシーンがあっておもしろかった。どこでこれだけ大人数の声を入れ、どこでキャラを印象づけるかという工夫(プリキュアのメインの視聴者層は古いプリキュアのすがたを本作ではじめて見る。なお、オールスターズ作品においては声なしで姿だけ登場するプリキュアも少なくない)。DXシリーズの集大成ということもあって、これまでに登場してきた映画のラスボスたちが勢揃いし、しまいには地球よりも巨大な〈ブラックホール〉という黒幕までもがあらわれて、その規模のデカさにびびる。成層圏を越えて、宇宙にまでとどくプリキュアの光……。

池田洋子『映画 スイートプリキュア♪ とりもどせ! 心がつなぐ奇跡のメロディ♪』(2011)。ひさびさのライト説明の寸劇アリ映画。「親子」というテーマをハートキャッチ映画から引き継ぎつつ、比較的ベーシックなプリキュア映画のフォーマットに回帰した本作。スイートは線の綺麗さが魅力的だ。「音楽は人の心の奥から生まれる」というクレッシェンドトーンの台詞にそうだよね!となる。歌はひとの抵抗の意志としてあらわれる。ビクトル・ハラ! 妖精ハミィの声をきいているとどうしてもおるちゅばんエビちゅのことを思いだしてしまってわらう。

黒田成美『映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』(2012)。ここからテレビシリーズを観ていないゾーンに入る。そんな認識だから、髪の毛に描かれている点々が雨滴に見える。タイトルの通り、プリキュアたちが絵本の世界に入って、桃太郎やシンデレラなどさまざまな童話のストーリーを体験していくという流れで物語はすすんでいくのだが、そこでのひねり具合がおもしろい。それぞれの登場人物が作品間で入れ替わり、なおかつ「敵」である鬼や牛魔王プリキュアサイド、それを成敗する「主役」の桃太郎や孫悟空が悪役サイドに立つのである。つまりは、みんなチグハグ! 「バトルでケリつけるぜ!(カードヒーロー)」じゃない決着のつけかたも印象深い。和解パートにそれなりの時間が割かれている。

また、本作において、みゆきとニコとのあいだにむすばれる「忘れる→思いだす」という関係性は、フレッシュ映画でもラブとウサピョンとのあいだに見られたもので、さらにはのちのドキプリ映画でも扱われることになるプリキュア映画の重要なモチーフだ。それは、プリキュアという作品自体が、人生における幼少期のいっときに向けられたものであることと無関係ではないだろう。わずか数年単位で作品を卒業していく子供たちが、いつかまたプリキュアを思いかえす。そうした願いがこの記憶の運動のなかにはこめられているように思える。

志水淳児『映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』(2012)。DXに変わる新生オールスターズ映画の開幕を告げる作品であり、わたしのプリキュア映画お気に入りの一本でもある。開幕早々敵とのたたかいを描き、オープニングのあいだにすべてのプリキュアを紹介して決め技を放つ構成にまず唸る。それぞれのプリキュアをカットイン風の名前入り一枚絵(髪の毛はなびいている)の連打で魅せるのがカッコいい。映画のところどころで各作品のサブキャラクターがカメオ出演するのもうれしい。肩で息をする描写や、あゆみの慟哭を上から撮るシーン(たしか『勝手にふるえてろ』でもそんな場面があった)など、随所での演出も冴えている。そして何よりキュアエコーという映画発のプリキュアの誕生。それが本作を本作たらしめている。

製作当時の最新プリキュアであるスマイルと、その一個前のスイートにスポットを当てつつ、主人公の立ち位置に置かれるのは引っ込み思案な中学生あゆみ。オープニングで爆散した敵〈フュージョン〉の分裂体フーちゃんとの友情を育みながら、彼女が一歩踏みだして成長していくストーリーが主軸となっている。「友達を守りたい、そんな優しい心があれば、女の子は誰だってプリキュアになれるのよ」とキュアミューズがいっていたが、それを証明する作劇は感動的だ。エピローグ部分の変身前のプリキュアたちが並んで歩いていくさまを、腰の部分だけ映すカットもちょうクール。制服や、そこからわかる立ち居振る舞いでだれだかわかるのがすごい。


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プリキュアとポエムのことだけ考えて生きていきたい。さいきんはよくそう思う。きもちのつな。プリキュアを観ている時間だけ精神がたもたれる。

夜、エスニックなきもちをかかえてつくった炒めもの。豚挽肉、玉ねぎ、さつま芋、トマト、豆を、塩胡椒、はちみつ、カイエンペパー、ハリッサ、豆板醤、ケチャップ、醤油、中華スープの素なんかで。うまい。