ぐにもつかぬの押印

読んだ本や観た映画の感想を書いたのち、ひき肉、糸こん、ごぼうを砂糖みりん醤油唐辛子でどうこうし、そぼろをつくる。できたては味がとがっていて、味噌ベースでやればよかったかなあという具合。石井光太『遺体』のつづきを読みながら、なじむのを待つ。

夕飯どきが近づいてきたのでスープもつくる。オイルサーディンとトマト缶、きざみたまねぎをにんにくとコンソメオレガノでどうこうする。オリーブのピクルス液とバターもひとかけ入れ、胡椒をふる。味見。ヤムなり。『遺体』をさいごまで読む。

食事をおえると妹がケーキをだしてき、母親からはプレゼントをもらう。なんと10年以上ぶりのプレゼントの中身は、「とっておきドラえもん」シリーズの単行本1冊と、ドラもえん50周年記念デザインの図書カードNEXT2種。ツボをついたうれしいチョイスに、ありがたいきもちになる。来年30かと思うとなかなか壮絶な(?)気分が訪れるが、そんなものはもうよろしいという気風もあり、けっきょくまあどうでもいいかという地点に落着する。もうすでに若くないのだ。

石井光太『遺体』。北条裕子『美しい顔』の元ネタであるという点、あるいは、石井光太自身がその書きぶりを同業であるノンフィクション作家たちから批判されているという前知識が邪魔をしたのかはしらないが、とくに後半、あまりよい乗りかたはできなかった。本書の主役として設定されている民生委員の、まるで人情ものの登場人物のような遺体に語りかける言葉のクサさが鼻についたのもあるかもしれない(「学君、待たせたね。これから、パパ、ママに見守られて、火葬場まで行くことになったよ。今日の午後にはお家に帰れるはずだ。嬉しいだろ。ママが手料理をつくって供えてくれるだろうから楽しみにしなよ。仏様になるまでは四十九日あるから、それまでは家族で最後の楽しい時間を過ごすんだよ」etc.)。とはいえ、「震災、津波の果てに」というサブタイトルが示す極限の状態、すなわち、津波が生んだ夥しい死体を目の前にして、ひとびとはいったいどのような行動を取ったのかというドキュメントとして、読むに値する本であることはまちがいない。くわしくはラジオで話す。


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夜までテキスト書き。じわじわとすすめる。すすみは遅い。ひさびさに麻雀も打つ。2着。成績は低下しつつある。人生は浮上するだろうか?