よい石の置きかた

朝、野菜スープの残り。のこった荷をひいひいいいながら箱に詰め、2時間強かかって搬出をすべて完了させる。完了させるといってもわたしはほとんどそれをながめていただけであり、よい引越し業者とはいったいいかなるものか……などとぼんやり考えながら荷運びするひとらの邪魔にならないよう隅に突っ立っていた。担当者同士が作業をしつつてきとうにふざけながら話している様子をどうとらえていいのかわからなかったが、アンチ労働の立場からとらえてみればそれはよいことにちがいないとしばらく経ってから思った。空になった部屋々々を軽く掃除し、昨日もらったシナモンパイをふたつ腹におさめ、カビキラー&マジックリンをした浴室でシャワーを浴びると20時半。とくになにをしたというわけでもないが、疲労がからだの幹をつかんでいる。明日家を立つときのための荷物の準備をおえると21時半。口さみしいなとちかくのスーパーにでかけ、パンとおにぎりと豆乳を買う。ブログを書きながらバクバク食べる。片方は朝ごはん用だったのだがムシャムシャ食べる。食べてる途中にお腹がいっぱいになってもモリモリ食べる。だってさびしいから。東京滞在最後の晩餐だ。あとは寝て起きて、午前のあいだに鍵を返して9年半の東京生活のおわり。


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夜が深まってきたころ、Nくんからグループ通話の誘いがあり、KとYも交えて4人で通話する。わたしたちは離れていても、こうやって話すことができる。井桁弘恵のかわいさを共有できてよかった。もっと共有したい。さみーなおいと思いながら丸めたタオルを枕に、上着をかけ布団がわりにして畳にじかに横になる。なかなか寝つけない。

起床、洗顔、荷物を整理し、かるく掃除。のこったゴミをだす。やがて管理会社のひとがやってきて、いっしょに部屋を見回り、過失はないでしょう、という風になる。曜日ちがいのゴミには指摘が入ったけれど、カレンダーに書いてないものはだしてないはずなのでまあ大丈夫でしょうということで家をでる。

新宿で土産を買っていると、盟友Rから連絡があり、いっしょに昼ごはんを食べることに。揚げ、焼き、生、煮(汁)で魚づくし。うまい。出会って10年の歳月を噛みしめながら、口内をちくちく刺す骨らを箸の先でどうこうする。バスの乗車口まで見送ってもらい、抱擁して別れる。だれかを見送ったり、見送られたりする記憶は、わたしのなかにのこりやすいものとしてある。

ひさしぶりに高速バスに乗って、街ゆくひとのすがたを車窓からながめているのがとても好きだと気づいた。池袋の無敵家の前を通るあたりで、白い服のひとが多いなと思ったときに、そう理解した。