果皮の数色

文藝のブレイディみかこと王谷晶の対談を読み、佐藤泰志『黄金の服』に手をのばす。前者の、貧困が「連帯して何かを求めないといけない」という気運をつくっているという話にウンウンとうなずくと同時に、だがじっさい問題、そんな風にわたし(たち)はうごいているだろうか?との疑念も浮かぶ。なかなか行動に移せないでいるのがわたしの現状で、とはいえワーカーズ・コレクティブについて話す会を企画したので、そこでそんな話を深められればと思うがはたしてひとが来る予感がしない。そうなったら船本洲治の『黙って野たれ死ぬな!』でもひとりで読んでようかな。

佐藤泰志のはかつて北海道に帰ってしまったH氏にすすめられた本で、数年越しに入手して頁をひらいている。はじめに収録されている『オーバー・フェンス』は山下敦弘による映画版を先に観ており、行を読みすすめるにつれ、ぼんやりとその記憶が起き上がってくるのがわかった。ドラマの立ちあがりかたがいいなあと十数頁読んで感じた。

乗代雄介『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』も数篇読む。どの話でもかならず声だしてわらってしまう。ほんとうにすごいと思う。同時代に生きていられてほんとによかったと思える数少ない作家だ。

キッチンに置いてある机の上を一匹の蟻が這いまわっており、その見たことのないフォルムと赤の体色に、すわヒアリかと退治してしまったのだが、画像検索して見比べてみるとどうもちがうらしい。翌日、電車のなかでわたしのシャツの上をちょこまかとうごめく黒蟻がおり、床に落ちてもらおうと手で払うと、なんと糸を垂らしている。昨日の個体含め、この生きものはアリグモと呼ばれる種で、ひょっとするとつがいだったのかもしれない、などと思うと、そこに深く痛ましい悲劇がひろがるのを感じる。


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夜、水菜と鶏胸とたまごの焼きうどん、酢醤油味。ブラッディメアリを2杯。笹かまとポテチも食べる。