あつまりの最小

Aokid『I ALL YOU WORLD PLAY』@STスポット、よかった! 高揚があった、色のレイアウト、エモさをはらんだ肉声のダンス、自分の得た感動を、相手に衒うことなく伝えるまっすぐさが、そのまっすぐさゆえに突き刺さってくる。

どうぶつえんではじめてAokidさんのパフォーマンスを観たとき、祝祭的なイメージが息づいているなと思ったのだが、今回は劇場公演ということもあって、さまざまな要素(映像、照明、音響、壁、モノたち……)がそれぞれにつよく主張してきており、祝祭性はその雑多な空間に他のものと並列してあるように見受けられた。この「雑さ」はわたしが信奉しているもので、しかもそれが放棄しすぎず、彫琢しすぎずのちょうどよい具合にまとまっていて、わたしの観おわったあとの満足感に直結したのであった。

アフタートーク菊地敦己が「途中のブレイクダンスだけプロフェッショナルで~」というようなことをいっていたが、その他のパフォーマンスにおけるアマチュアリズムとこんごどう向きあっていくのかが気になる。今回はよい方向にころがっていたと思うのだが、5年10年のスパンで考えたときにはたしてよいのかはさだかではない。

観ている最中はダンスとして受け取っていない時間もけっこうあったのだが、たしかに踊らされたこの胸を思い返すに、まぎれもなくこれはダンスなのだと、そういいきりたくなる作品だった。

[ツイートした感想]
Aokid『I ALL YOU WORLD PLAY』。手は音を鳴らし、つかみ、ささえ、指差し、弾き、描く。青春と喜びに振りきれた、とびきりフレッシュなマクルーハンという印象をもった。終演後、差しだしたぼくの手を握りかえしてくれた彼の手から、全身から、たしかに受け取ったものがある


さいきん観たもの読んだもの
島地保武×環ROY『ありか』@KAAT
排気口『そしてきせきはしんじれて』@プロト・シアター
イェスパ・ネルセン『きっと、いい日が待っている』@恵比寿ガーデンシネマ
ヨン・サンホ『新感染』@渋谷シネパレス
ポール・バーホーベン『ELLE』@渋谷シネパレス
外山恒一『良いテロリストのための教科書』(青林堂
ウラジーミル・レーニン『国家と革命』(講談社

どれもまあまあおもしろかった、もう長らく宣伝美術を担当している排気口、一皮むけたように思う、でかい箱でも通用する物語の強度、この推進力が作品を引っ張りつづけ、些細なことはどうでもいいのだといわんばかりの荒々しさがガツンとこちらに迫ってくる、伏線の企みを一気にたたみかけるラスト、ひさしぶりに演劇を観てびりびりとふるえるものがあった、作中、文学に対する茶化しが入るが、そこに立脚するのだというつよい意志を感じた、とはいえ演出にほとんど荷重がないのとそれに伴わなくても役者の完成度がまだまだ甘いので次回はぜひ克服してほしい

その他についてはまた後日触れる。

いまはピエール・ブルデュー×ハンス・ハーケ『自由-交換』、ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』、『谷川雁セレクション』、廣瀬純『蜂起とともに愛が始まる』などを読んでいる。