なんどで、安全ピン、刺してなんどもとれて

松本俊夫が死んだ。もっとも影響を受けた映画(映像)理論家だ。おれの卒論は彼なしには成立しなかった。もちろん理論だけでなく、『アートマン』や『色即是空』などの作品にも感銘を受けた。作品はYouTubeにたくさんあがっており、ネットにつながってさえいれば誰でも見ることができるのだが、やっぱり劇場で観てほしいと思う。感動がぜんぜんちがう。あのサイケデリックアヴァンギャルドを泥酔状態で受容する、ということでいえば家で観るのもまた一興か。Ⅱ以後の刊行が滞っている『松本俊夫著作集成』もはやくでればよい。脱コード、脱コード。

『ストロングマン』、『夜は短し歩けよ乙女』、『クーリンチェ少年殺人事件』を観た。むさくるしいおっさんたちがはりあうくだらなさ、青春を縦横に躍動するアニメーション、埋没を強いる社会のなかで発光する若さのいらだちが◎だった。とくにクーリンチェは傑作傑作いわれるだけあって、圧のある映画体験だった(もちろん4時間あるという量の問題がおおきくかかわっているのだが)。余韻の持続、観おわったあとに劇場をでると世界が変わって見えるタイプの映画。小四の純粋さに魂が浄化される思いがした。そして10代を救いたいと、おれも思ったのでした。『夜明け告げるルーのうた』もたのしみだ。

『ヒメアノ~ル』と『ディストラクション・ベイビーズ』も観た。先日の二本立てにくらべたらだいぶ落ちるのだけれど、それなりにはたのしめた。とくに前者は森田剛ナチュラルなキチガイっぷりは「学校へ行こう!」なんかとのギャップもあってヒリヒリ。コメディタッチと殺戮の違和感なき同居がうまいぐあいに成立していた。明るく陽気な昼の世界から不穏で狂気的な夜の世界にギアチェンジしていくタイトルバックにもしびれた。

ディストラクション・ベイビーズ』は小松菜奈がセクシーだったなー向井の音楽かっけーなー菅田将暉おもろいなーって感じだった。ディスコミュニケーションの解決としての暴力を否定し、コミュニケーションとしての暴力を肯定する、まではいいとしても描きかたが好みではなかった。おなじ暴力的な映画でも『ケンとカズ』のほうがずいぶんよかったな。『NINIFUNI』観てみよう。

先々週ぐらいにころんでけがをした。柵としてのロープにひっかかり勢いよくアスファルトに転倒したのだった。ひざに水がたまるってのはこういうことかと実感している。にんげん身体おもしろコース。