あわだつ脳の飛行形態(分有からの離脱)

隣に座った男の所作がいちいち雑であるということだけでおれの殺意はふくれあがっていく、おそらく知的障害者、そんなレッテルに左右されるな、怒りの理由付けをまちがえるな、電車を乗り換える際にその姿を見つめたがおそらく健常者、そんなレッテルに左右されるな、スペース、それぞれのスペース、わたしの思考は狭くなる、なにもこたえない、なにもうごかない。

おまえの背中にかいてある「HASEBE」の文字が「WASABI」にみえる。今日はワールドカップ予選の日だ。対面に座ったユニフォーム姿のカップルにしたしげに喋りかけるおっさんだけが救いだった。踏切のまえで祈る男の背中にはなにも書かれていなかった。