読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自分を確かに通りすぎたきもちを覚えていない

勝手にあなたのためを思われる。あなたのためを思って、は欺瞞である。自分がいちばん自分のことを思っている。でも、あなたのためを思うのは勝手である。わたしはわたしのことを思っている。自分に自分を背負わせる。わたしはわたしを思いながら、あなたはわたしを思うかもしれない。その思いはわたしを通って、けっきょくあなたにたどりつく。その回路よりも、わたしはわたしを通してあなたにたどりつきたい。そのちがい。

利己主義が好きだ。究極的な利己主義はぜったい利他になると思っている。でもこれって新自由主義的? 主義主義うるせー、にんげんは主義なんかにとどまれるほどつよくねー、でも主義はつよい支えになるだろ。佐々木ユキ主義みたいなのがちょうどいいんだ。みんなも観よう、福間健二『あるいは佐々木ユキ』。新作がこの秋公開されるのでそれも観よう。

ちかぢかおれは引っ越すだろう。神奈川県から東京都へ引っ越すだろう。そしたらホームパーティをやる。おれはおいしい料理をつくり、みんなでそれをたべる。みんなは酒をもちより、へべれけになる。新品の安いレコードプレイヤーからはいい感じのインディーミュージックがながれる。ひとりがおもむろにたちあがり、おどりだす。みんなはわらいながらからだをゆらしはじめる。きょうはじめて会ったひとどうしが、つつましいおしゃべりをしている。煙草を吸うために部屋をでたおとこは、誰よりもはやく初雪に気づく。いま駅ついたー、とスマートフォンの画面がひかる。わたしたちはしろい息をはずませながら、とてもささやかな行進をはじめる。